アマゾン運営「仕事サイト」の過酷すぎる実態 メカニカル・タークを使って働いてみた
また、全員の報酬が低いとは限らない。トップクラスのターカーになると時給換算で12ドル以上稼ぐ。その背後には、「HITキャッチャー」や「HITフォーカー」といった無料のコンピューターソフトウェアを使って高報酬のタスクをライバルに先んじて見つけたり、ギャラの高いタスクに応募するための特別な資格を増やすといった努力がある。
アンバー・スムート(32)は優秀なターカーだ。彼女はフロリダ州ミドルバーグにある婚約者の実家のポーチで、犬たちが遊んでいるのを見ながらHITフォーカーをバックグラウンドで動かす。
単価1ドル以上のタスクが見つかると、コンピューターからロックが流れるので、スムートはそのHITを引き受け、一定量がたまるまで取っておく。「リストに入れておいて、まとめて片付ける」と彼女は言う。
彼女自身はメカニカル・タークで生計を立てているわけではないが、生活のためにやっている人が多いのは承知している。だからターカーの集まる掲示板では、長い時間をかけて初心者向けにアドバイスを書き込んでいる。
「私はメカニカル・タークが好きだし、メカニカル・タークが人々に与えるチャンスも評価している。副業としてはすばらしい」と彼女は言う。「だがアメリカという国には、仕事にすべきでないことを生計の手段として選んでいる人がたくさんいる」。
ターカーの労働条件の改善を訴えているミランドによれば、メカニカル・ターク最大の問題は、依頼者はターカーが提出した仕事を、データは受け取っておきながら承認拒否して報酬の支払いを拒むことができる点にある。「自動的にタスクの10%をリジェクトして、それをアマゾンへの手数料支払いに充てていた事実を隠そうともしない依頼者もいた」とミランドは言う。
依頼者の追跡が難しい理由
問題のある依頼者との交渉にあたって、ターカーはほぼ孤立無援だ。何せ、相手の正体すらわからないこともしばしばなのだ。多くの依頼者は「イベント」や「パネル」そして、「デービッド」や「ジョシュ」といったありふれた、追跡の難しい名称で仕事を出している。
私が写真から被写体の「愛国心」などの点数を付けた仕事の依頼者はビジョンという会社だった。私は同社の仕事を8セット行った。報酬は1セットにつき5セントで、計算上は40セント稼いだはずだった。ところがビジョンからの支払いはそれより15セント少なかった。
私は「依頼者に問い合わせる」のボタンをクリックし、電子メールで連絡してくれと2度にわたって申し入れた。だが返事は1回も来なかった。
こういう場合、私はどうすべきなのか。メカニカル・タークのヘルプページによれば、アマゾンはこういう問題とは無関係らしい。「特定のHITに関する指示について、またHITを完成させるにあたって、もしくはHITがリジェクトされた理由について疑問がある場合は依頼者に問い合わせましょう」とヘルプには書かれている。「いつHITを承認するかは依頼者が決めるということを留意しておいてください」。