「ニベア」が50年で圧倒的な地位を築けた理由 定番品が「手軽なコスメ」で再ブレイク

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「SNS時代となり、そうした消費者起点の情報が増えました。メーカーとして発信しているわけではありませんが、ご使用の仕方が広がっているのを感じます」(雨宮氏)

これ以外に、例えば「アイシャドーと混ぜて使う」「ヘアケアの保湿としても使える」といった情報も活発に発信されている。いずれも全否定される話ではないようだ。

クリーム+愛情の「情緒的価値」

マーケティングの視点では、商品の訴求には「機能的価値」と「情緒的価値」がある。

前述したニベアクリームの商品特性は機能的価値だ。お客は品質を信頼し、保湿面での効果・効能を期待する。一方の情緒的価値は、消費者の感性にも訴えるものだ。

「ニベアクリームには、幼い頃、冬になるとお母さんやお父さんに塗ってもらった記憶を持つ大人の方も多いのです。クリームと愛情や思い出が結び付いている。そうした情緒的なつながりも、ニベアが長く愛されてきた理由の1つだと考えています」(雨宮氏)

2018年の日本発売50周年で、その記憶を呼び起こす訴求も始めた。

「『うるおいつないで50年』をテーマにお客さまとの絆をさらに深めるキャンペーンを実施しました。『ニベアクリーム親子3世代篇』CMでは、当時と現在の通学バスの前でクリームを塗るシーンで紹介しています」(雨宮氏)

花王グループが得意な“説明調”の映像だが、それもまたニベアの世界観を示している。

「身の丈消費」の象徴

筆者は、ニベア人気の再燃は「身の丈に合った消費の象徴」だと思う。一生懸命に働いても思うように報酬が伸びない時代。例えば、新生銀行が毎年発表する「サラリーマンのお小遣い調査」では、20代から50代までの世代(男性・女性)の大半が4万円未満だ。

そんな時代に消費活動の根幹をなすのは「コスパのよさ」だろう。何万円もするクリームは憧れるが、現実的には買わない。多くの消費者がワンコイン以下のニベアクリームを買い、惜しみなく使う。美容意識の高い人は使い方を一工夫する。

外食に例えれば、「豪華食材の高級フレンチには憧れるけど、家庭的な洋食店でも味はいいし、おサイフにやさしい」に近い意識だと思う。それだけ消費者が賢くなったのだ。

商品やブランドの世界では「定番」という言葉もある。筆者は「見慣れた景色の一部になること」と解釈している。小売店の店頭、家庭の浴室や洗面台に置かれる“景色”が続くかどうかに、ニベアブランドの未来図があるはずだ。

高井 尚之 経済ジャーナリスト、経営コンサルタント

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たかい なおゆき / Naoyuki Takai

学生時代から在京スポーツ紙に連載を始める。卒業後、日本実業出版社の編集者、花王情報作成部・企画ライターを経て2004年から現職。「現象の裏にある本質を描く」をモットーに、「企業経営」「ビジネス現場とヒト」をテーマにした企画・執筆・講演多数。近著に『なぜ、人はスガキヤに行くとホッとするのか?』(プレジデント社)がある。

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