JRAで「競馬の馬場」を作る男のハンパない情熱 今ある環境で"馬を強くする"という発想

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競馬場の馬場管理を担当するJRA馬場土木課の長岡慶幸さん。力を入れて取り組んでいた“馬を強くする馬場”とはどういうことなのか、話を聞いた(撮影:今井康一)
この連載では、社業を極める「オタク」たちに焦点を当てている。誰しもがそうなるべきとは考えていないが、“好き”を仕事にする、仕事を好きになりたい人へのヒントが、ここにあると思う。
今回インタビューしたのは、JRA(日本中央競馬会)馬場土木課の長岡慶幸さん。競馬場の芝やダートを間近で見たことがあるだろうか。芸術的なまでの均質さに、おそらく誰もが度肝を抜かれることだろう。
その馬場を管理するのが馬場土木。多岐にわたる業務をこなしているが、中でも調教施設に“馬を強くする馬場”を作った話は興味深いものであった。

“馬を強くする馬場”の背景に調教施設の違い

JRAは東西に2つのトレーニングセンター(調教施設)を持っている。1つは滋賀県の栗東(りっとう)に、もう1つは茨城県の美浦(みほ)にある。それぞれに所属する馬を、関西馬、関東馬と呼ぶ。昭和の時代は関東馬が強かったものの、平成に入って以来、関西馬の勝ち数が関東馬を上回るようになっている。

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原因は複数考えられるものの、栗東と美浦の坂路(はんろ:坂のコース)の違いが指摘されている。坂路の規模をそろえれば済む話かもしれないが、改修は容易ではない。そこで、2013年ころから美浦トレーニングセンターである取り組みが始まる。“今ある設備でいかに強くするか”と考えられたのが、“馬を強くする馬場”なのだ。

――JRAは3年くらいで異動することが多いそうですね。長岡さんは、トレーニングセンターにトータルで7年間勤務したとのことですね。

栗東に3年行き、その後に美浦に行きました。栗東と美浦、どちらも2000頭ほどの馬がいて、月曜日以外は毎日調教をやっています。トレーニングセンターは競馬場とは管理が違います。トレーニングする馬場は、芝やダートではなく、ウッドチップが主体です。周回コースに加えて、坂路という坂の馬場があります。坂路もウッドチップです。

ウッドチップは足元に優しく故障が少ないのに加え、走るために力が必要でトレーニング効果が非常に高いんです。

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