第5回 ドイツから考える、体罰が生まれない理由

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体罰が生まれないのは

まず大人にとって、たとえば働き盛りの現役世代でも仕事以外の人間関係が必然的に生まれる。スポーツという共通の趣味を持ちながら、異なる価値観や職業の人間と日常的に接するわけだ。リタイアする前から職縁以外の人間関係がすでにできている。

また子供たちは別の学校の子供、年齢の異なる子供、そして大人と相まみえることになる。つまり学校が唯一ではなく、違う世界がある。それに対して日本では上下関係などを極端に重視する価値観「体育会系」があり、「部活」は子供たちにとってタコツボのように狭い。陰湿ないじめが発生しやすいのも当然と思える。現在の指導者もこういった環境で育ってきたわけだ。

欧米の外国の若者は大人っぽいといわれることがあるが、ドイツに関していえば、子供の時から学校以外の世界と接していることが大きく影響していると考えられる。加えて「スポーツ・クラブ」という価値体系のなかでスポーツ活動してきた子供が大人になり指導者になったとき、ビンタなどの体罰が当然とする考え方は構造的に生まれにくい。

ドイツのことを「スポーツ大国」とされることがあるが、社会的な組織(スポーツ・クラブ)のかたちで行われており、生活の質を支え、多様な人間の社交装置になっている。これが「スポーツ大国」の正体といえるだろう。

高松 平藏 ドイツ在住ジャーナリスト

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たかまつ へいぞう / Heizou Takamatsu

ドイツの地方都市エアランゲン市(バイエルン州)在住のジャーナリスト。同市および周辺地域で定点観測的な取材を行い、日独の生活習慣や社会システムの比較をベースに地域社会のビジョンをさぐるような視点で執筆している。著書に『ドイツの地方都市はなぜクリエイティブなのか―質を高めるメカニズム』(2016年)『ドイツの地方都市はなぜ元気なのか―小さな街の輝くクオリティ』(2008年ともに学芸出版社)、『エコライフ―ドイツと日本どう違う』(2003年化学同人)がある。また大阪に拠点を置くNPO「recip(レシップ/地域文化に関する情報とプロジェクト)」の運営にも関わっているほか、日本の大学や自治体などで講演活動も行っている。

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