人類は富を創出してもこれ以上豊かにならない

斎藤幸平×水野和夫「ポスト資本主義」を語る

資本主義の次の社会を生み出すためのカギは何か? (左)斎藤幸平氏と(右)水野和夫氏に話を伺った(撮影:露木聡子)  
「資本主義が終焉期に入っている」と多くの著書で指摘する水野和夫氏。資本主義や民主主義の危機について海外の知識人たちを訪ね歩き、編者として『資本主義の終わりか、人間の終焉か? 未来への大分岐』にまとめた斎藤幸平氏。「人類は資本主義を本当にこのまま続けられるか」(2019年11月20日配信)に続く対談後編をお届けする。

欧米のグリーン・ニューディール政策

斎藤幸平(以下、斎藤)前編で名前を挙げたギリシャ元財務相で経済学者のバルファキスは、DiEM25(Democracy in Europe Movement 2025)という大きな運動を展開しています。これは、2025年までに、本当の民主主義を実現するような新しいEUをつくろうという国家横断的なプロジェクトです。

このプロジェクトが大きく打ち出しているのが、グリーン・ニューディール政策です。特別公債を発行して、グリーンなエネルギーや技術に投資する。そうやって安定した雇用を作り出し、エネルギー効率のいい公共住宅や公共交通機関を拡張するわけです。これは、緑の社会システムに移行を促進すると同時に、貧困問題の対策にもなる。

水野和夫(以下、水野):どのぐらいのお金でEUをグリーン経済にできると試算しているんですか。

斎藤:ひとまず2020年から5年間で300兆円ぐらいです。だからEU全体で、年間60兆円の公債を発行するというイメージです。

水野:EU全体ならば、決して非現実的な数字ではないですね。日本はEUの4分の1の経済規模だから、単純に計算すれば、年間15兆円ぐらいでグリーン経済に移行できる。

斎藤:どうお金を捻出するかは、公債以外にも方法はあると思います。アメリカのバーニー・サンダースもグリーン・ニューディールを提唱していますが、彼は国債ではなくて富裕税を課すとか、汚染者負担の原則で石油産業に負担させるということを考えています。

水野:手法は違いますが、どちらもかなり具体的な試算までしているんですね。私自身はなかなか具体策までは出せず、よく批判を受けるんですが……。脱成長や定常社会というだけでも異端扱いですから。

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