日本で就職氷河期ということが定着したのは約20年前だが、デフレが始まりつつあったときと同じだ。それ以降、若者が就職に苦しむという状態が恒常化した。同時に、若年層を中心に非正規雇用の割合が高まり、いわゆる「若者の草食化」が言われた。その主たる原因こそ、デフレという経済状況を20年余りも放置したことだ。そして、若者の経済基盤が失われたことが、日本で最大の問題とされている少子化も、若者の経済基盤が失われたことで拍車がかかっている面も大きいのだ。
「デフレが続いてもいい」「経済成長を追求するのは時代遅れ」など、筆者からすると突拍子もない考えに賛同する方は、「デフレによる、若者の就職難や失業者の増大」を問題だと思っていないことと同じなのだ。そうした方々は、もしかしたら、「失業や貧困に直面するのは、個人の自己責任。自分のように勤勉に働かないから、そうなるのだ」と考えているのかもしれない。
採用方法見直しでは、若者雇用はさほど増えない
そうお考えになる方は、おそらく勤勉に働いていらっしゃるのだろう。だが、若年層の労働環境が変わり、就業難やブラック企業がこれほどまでに社会問題として話題になっている状況をどう考えたらいいのか。「若者の気質」などというあいまいな要因によるものだろうか。むしろ、個人の自己責任の範囲を超えている、と考えるのが自然だろう。「デフレ好き」の方は、経済現象をミクロの視点でしか考えられないため、デフレと低成長がもたらす害悪と日本の労働問題を関連づけて考えることができないかもしれない。
新卒一括採用という、日本企業の伝統的な採用スタイルが問題という見方もある。ただ、結局は、総需要が停滞し経済全般が縮小する中で、採用方法を見直したところで、経済全体で若年層の雇用の場は大きく増えない。20代で相応の働く経験を積むことができないと、給与水準が高い正社員の職を得ることは難しくなる。デフレと経済停滞下では、給与水準が低く、不安定な職業にしかつけない可能性が高まる。
もし、運よくどこかの会社の正社員の職を得たとしても、デフレと低成長の下ではほかの企業への転職のコストは極めて大きくなる。転職のリスクが高いため、満足とは言いがたい職場環境でも、我慢を重ねて働き続けることを優先せざるをえない。デフレという経済状況では、チャレンジして新たな職の場を得たり、あるいは一念発起して起業しようとチャレンジするコストが極めて大きくなる。
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