前回のコラムでは、デフレの長期化で経済・労働環境が悪化し、それが起業などの妨げになっていた可能性を指摘した。アベノミクス発動でインフレが定着することで、サラリーマンの世界でも転職あるいは起業など、自ら変化を起こすことでリスクをとる動きが活発になる、と述べた。
ツイッターなどを中心に、読者の皆さんから様々なフィードバック(ご意見)をいただいたが、批判的なご意見もあった。「事実認識の相違」によるものや、筆者の筆力が至らず、少し誤解を招いてしまったケースもあった。筆者は、「金融緩和強化によるデフレ脱却は、単にインフレ率を変化させるだけではなく、日本の実質経済成長率を高め、様々な経済問題の改善につながる」と予想している。
デフレと、個人の起業や転職は関係がないのか?
今までの日本経済の問題の例として、「起業・開業活動の減少」、あるいは「転職が広がらない労働市場の機能停滞」が挙げられるわけだが、筆者は、それらの問題と「デフレというマクロ経済の問題」には、密接な関係がある、と考える。インフレが定着し、経済成長率が高まり、多くの人が「景気が良い」という状態になれば、より高い目標を目指し、起業や転職にチャレンジする動きが増える、ということは筆者には自明の理に思えた。
ただコラムに対して、「デフレの問題と個人の起業や転職は関係ないだろう」という複数の意見を頂戴した。中には「日本では、バブル期に開業率が最も低かった(?)」という例を挙げて、「デフレ(経済停滞)と起業活動は関係なく、景気が良すぎると開業率が低くなる」という指摘もいただいた。
もし、この主張が正しいとすれば、バブルのような景気が良いと起業・開業という動きが停滞し、反対に「デフレと景気低迷時」の方が、起業が活発になるということになる。過去の約20年、経済停滞によって起業などが停滞していると筆者は理解しているのだが、それとは真逆に、「日本は経済停滞でも起業はそれなりに活発で、むしろ望ましい」と認識されているわけだ。
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