起業や転職が活発になるためには
そうした方々は、以下のような考えなのかもしれない。つまり、デフレという厳しい経済状況の中で、既存企業の淘汰が進む。そうした中でこそ、新規ビジネスが勃興しやすい。また、バブルのときのように、景気が良い時は、必要に迫られ起業する必要もなく、また既存企業の淘汰が進まないので、起業・開業が停滞する、とお考えなのかもしれない。
こうした考えとは反対に、筆者は、「起業や転職が活発になるには、景気が良くなり、仮に失敗してもリカバリーできる経済状態の方が、幅広い方が起業などにチャレンジする機会が増える」と考えていた。どちらが正しいのだろうか?
起業(開業率)の動向について、さまざまな解釈がある背景をたどっていくと、日本の会社の開業率の計測には複数の基礎データが使われ、いくつかのバージョンがあるという事実に行き着く(下図)。
例えば、総務省の事業所統計では、開業率はバブル期に下がり90年代半ばまで低下、その後デフレが本格化したタイミングで開業率が若干上昇した。
確かに、この統計によると、バブル期に開業率が先に低下、その後は開業率が上昇したということになる。ただ、同調査によれば、開業率が90年代後半から持ち直しても、その後ほぼ横ばいで推移する一方、廃業率の上昇傾向がはっきりしている。廃業率上昇、すなわち既存企業の淘汰が進んでも、開業率はほとんど上昇していない。
一方、厚生労働省の雇用保険のデータを見てみよう。このデータに基づけば、バブル期に開業率が上昇し、バブル崩壊後に開業率は低下している。そして、前出の事業所統計のデータ同様に、1990年代後半から開業率の停滞が続く中で、廃業率が上昇している。
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