アメリカがアベノミクスに味方する理由 「貨幣」から読み解く2014年の世界経済(上)
「円安是認」へと舵は切られた
2013年12月18日、FRB(米連邦準備制度理事会)が量的緩和の縮小を開始した。金融緩和の出口戦略は、バランスやタイミングのかじ取りが難しいものである。しかし今回の緩和縮小を見ると、市場から購入する債券の額の縮小規模(月850億ドルから750億ドルへ)が比較的小さいことが市場に好感され、FRBの政策決定は成功といえるだろう。アメリカの株価が上昇し、日本の株価もこれに牽引されるかたちで上昇した。
量的緩和縮小について是非を議論する際は、二つの側面に着目しなければならない。一つは金融資本の立場、もう一つは実体経済の立場からの見方である。前者についていえば、金融緩和の縮小によって、アメリカ国債の金利が上昇し、その金利を求めて、世界のマネーがアメリカに入り込み、ドル高を招くという点が挙げられる。その資金の一部は株式や不動産にも流れることで、アメリカの債券・株式市場は「世界のマネーはどこに向かっているか」を測るバロメーターとなりうる。世界中がアメリカ市場の反応を注視しているのもそのためだ。
したがって本インタビュー時点(1月下旬)において、アメリカの株式市場が空前の高値をつけているのは、世界の資金が再びアメリカをめざしていることを物語っている。もちろん株式市場の性質上、株価が乱高下したとしてもおかしくはない。その際に、「アメリカ経済の悪化によって株価が下がった」と判断するのは早計である。
また、逆に、現在の株価や不動産価格の上昇はすでにバブルではないかという見方もあるが、これから述べるように実体経済がまだ回復期であり、成長の余地を残しているという点からみて、それも正しくない。
そこで、金融市場が政策に過剰反応することを踏まえ、長期的なアメリカ経済の展望を見通すうえで、実体経済に目を向けることが不可欠になる。
その観点から見れば、FRBが量的緩和縮小を決定したことは、アメリカの実体経済にとってプラスのサインである。なぜなら、もともとFRBは「実体経済の回復」を緩和縮小の条件として掲げていたからだ。つまり今回の決定は、アメリカ経済の下振れリスクがある程度減少した、という表れにほかならない。