アメリカがアベノミクスに味方する理由

「貨幣」から読み解く2014年の世界経済(上)

だが、過剰人口が消え、途上国が先進国化しなければならない段階において、大きな岐路に直面する。ダロン・アセモグルとジェイムズ・A・ロビンソンが『国家はなぜ衰退するのか』(上・下、早川書房)で指摘したように、政治エリートが自らの既得権益を開放し、多数の国民に経済革新の機会を与えていく体制に転化するか、それとも政治エリートが同時に経済エリートとなり、経済利益を独占し続ける体制になるかである。中国では、平等理念を追求するはずの共産党が、経済エリートを内部に取り込むことによって、国有企業を通した一種の収奪機関として機能しはじめている。それは、共産党が自らの手で政治体制を民主化していくことを困難にし、長期的には、経済の民主制としての資本主義の発展に対しても足かせになっていく可能性が高い。

アセモグルとロビンソンの議論は一般的すぎて問題が多いが、基本的洞察はうなずける。その意味で、中国の国家資本主義は本質的な矛盾を抱えており、すでに不動産バブルや格差問題の拡大やエリートによる資産の海外逃避といったかたちで、綻びを見せ始めている。

領土問題も矛盾の表れ

尖閣諸島をはじめとする近隣諸国との領土問題も、この矛盾の表れである。民主的な選挙制のもとでは、政治支配の正統性は、まさに選挙を通した民意である。だが、その制度がないとき、建国の神話か人民の熱狂、そして究極的には軍隊の支持に頼らざるをえない。この三つをすべて集約したのが、尖閣問題にほかならないのである。

現在、中国共産党はバブル崩壊を防ぐべく最大限に景気の下支えを行なっているが、先行きは不透明である。ヨーロッパでは中国に対する幻想が残っているものの、アメリカはすでに中国の行く末を冷めた目で見詰めはじめている。国債を大量に保有されているので、それが一挙に放り出される事態を招くハードランディングだけは避けたい、というのが本音だと思う。

(Voice2014年3月号より 後編は2月18日公開予定です)

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