PHSのウィルコムが剣が峰、事業環境の激変で次世代サービスにも黄信号
450万のPHSユーザーを抱える携帯キャリア、ウィルコムの非常事態が続いている。
10月からブロードバンド新サービスの「ウィルコム コア XGP」(次世代PHS)を始めたが、提供エリアは東京山手線内の一部地区で、対象端末もたったの400台(2010年3月末まで無償貸与)。これでは試験サービスと変わらない。
成長戦略の中核であるサービスにもかかわらず、簡単なリリースを行っただけ。新たな製品やサービスごとに大々的な発表会を開催する携帯業界の中では極めて異例だが、静かに始動せざるをえない理由がある。
携帯とのガチンコ勝負 たちまち成長が鈍化
同社は9月24日、私的整理の一つである事業再生ADR(裁判外紛争解決手続き)を申請し、正式に受理されたことを公表した。次世代PHSの展開に向け「財務体質の抜本的な改善が不可欠」との判断から申請に至り、債権者に対し借入金の元本残高維持や弁済スケジュール(長期借入金のうち09年度返済予定245億円、10年度返済予定690億円)の変更を要請している。
08年度の収支は黒字で一見すると数字は悪くない。だが8月末には筆頭株主(持ち株比率60%)米投資ファンドのカーライル・グループ主導で新社長が就任、ウィルコムの顔だった喜久川政樹氏が副会長に退く体制変更があった。不況に強いはずの通信キャリアの変調には、携帯業界のさらなる競争激化が背景にある。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら