PHSのウィルコムが剣が峰、事業環境の激変で次世代サービスにも黄信号
固定電話の子機を発祥とするPHSは日本生まれの通信技術。各社が撤退する中で唯一生き残ったウィルコムは、音声定額など大手キャリアにはない独自サービスを展開し、しばらく停滞していた契約者数も05年以降は再び盛り返していた。
しかし、それも長くは続かなかった。07年、ボーダフォンから生まれ変わったソフトバンクがウィルコムのお株を奪う音声定額サービス「ホワイトプラン」で大攻勢をかける。さらに新規参入を果たしたイー・モバイルがPHSよりはるかに高速なデータ通信サービスで勝負に出た。ウィルコム契約者数の伸びがパッタリ止まったのはこの年である。
次世代はさらに競争激化 難しいスポンサー探し
契約数が伸びず、価格競争でARPU(顧客当たりの月額収入)が下がる中、次なる新戦略として掲げていたのが、ライバルに引けを取らない次世代PHSでの高速データ通信だった。だが、新サービスの投資が必要な時期に、競争激化と世界的な金融危機が直撃。今年の春先にはカーライルによる約50億円の増資が検討されたが、これも実現せず。有望市場と期待された中国がPHS終了を決めたのも追い打ちをかけた。
管轄の総務省は「今回の事業再生は次世代サービスをしっかりやっていくために進めていると聞いている」と静観の構えだ。弁済猶予のために、債権者から事業再生計画に対する同意を得る必要がある。
仮にそれが認められても、ウィルコムの苦境が解消されるわけではない。存続を懸けた次世代PHSを計画どおり進められるのかは、予断を許さない。
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