「いまいちばんお気に入りのパン屋さんで」
そうお願いして福地さんに選んでもらった撮影場所は、問屋とオフィスビルと住宅が建ち並ぶ東京の東日本橋にある「ビーバーブレッド」。
開店早々、常連客とおぼしき人たちがひっきりなしにパンを買いに来る町のパン屋さんだ。その前で待っていると、小柄でスリムな福地さんが現れた。表情はいくらか高揚しているように見える。
冷凍庫や胃の空き具合と相談し、限界まで買いたい店
「ビーバーさんに来る日はいつも、何か新しい驚きがあるという期待があってワクワクするんです。ここは、どのパンが好きというより、そのとき並んでいるパンをぜんぶ味わいたいお店。冷凍庫や自分の胃の空き具合と相談して、限界まで買いたい。だから、何を買うのがベストか真剣に考えはじめると、挙動不審になってしまうんです」
福地さんがそこまでこのパン屋にほれ込んでいるのは、シェフの割田健一さんに対する絶大な信頼があるからだ。銀座の「ビゴの店」で修業した割田さんは、2007年に、パンの世界大会「モンディアル・デュ・パン」に日本代表として出場。人気店「ブーランジェリーレカン」のシェフを長らく務めたあと独立した人物。
「割田さんがレカンにいた頃、レモンオイルとレモンの皮を使ったシトロンのチャパタがあまりにもおいしくて、特注で特大サイズを作ってもらったことがあるくらい好きだったんです。どんな素材も魔法のように使いこなして、ほかでは食べられない唯一無二のパンを焼き上げる。そしていちばんおいしく食べる方法も商品を通じて提案してくださるので、何を手にとっても間違いがありません」
ビーバーブレッドは、クリームパン、メロンパンなど昔ながらの日本のパンも人気だが、有名レストランとのコラボパン、そして、割田さんオリジナルのサンドイッチが目当てで買いに来る人も多い。
その時々で手に入った極上の素材を使って、サプライズで登場する商品もある。中でもこの日、値段の高さでも目を引いたのが、パストラミがたっぷり入ったかなり厚みのある「パストラミイサミビーフ」(1000円)のサンドイッチ。
実際に食べてみると、肉のうま味とキャロットラペの酸味とカレー風味のザワークラウトの味わいが、しっとりした食パンの甘みで引き立って、ボリュームも味も値段に劣らぬ満足感だった。
「いつも選びきれなくて、全部買って冷凍したい!と思うんですが、焼きたて作りたてをすぐ食べるのは格別なんですよね」と福地さんが笑うのもうなずける。
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