失敗から学んだ「長崎ちゃんぽんリンガーハット」の大きな賭け!《それゆけ!カナモリさん》

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 では、値上げの反応はどうか、同社の「リンガーハット西新宿店」に値上げから2日目の10月2日に行ってみた。12時過ぎには比較的広い店内のカウンターは満席となった。値上げによる顧客離反は今のところ見受けられない。

 「皿うど~ん」「ちゃんぽ~ん」という、来店客の食券を読み上げて厨房に伝える店員の声が響く。その中に、かなりの割合で「野菜たっぷり~」との声が混じる。およそ3~4割はあるのではないだろうか。マージンミックスも成功しているようだ。

 筆者の目の前にも「野菜たっぷりちゃんぽん」が置かれた。麺とスープの上にうずたかく野菜が積み立てられていて大迫力である。「喰いきれるかな……」と思いつつトライすると、あら不思議。温野菜が優しい。しっかり胃袋に収まる。野菜をたっぷり食べた!という強烈な満足感。とっても健康にいい気分満点である。「また、時々食べに来よう」とリピート意欲もしっかり湧いた。

 前回の値上げによる失敗を教訓として、今回は顧客ニーズと、顧客への提供価値を考えぬいたのだと舌と胃袋で感じられた。どうか、今回の戦略がうまくいきますようにと心の中でエールを贈りつつ、店を出た筆者であった。(満腹になった腹を抱え、したたる汗をハンカチでぬぐいながら)。

《プロフィール》
金森努(かなもり・つとむ)
東洋大学経営法学科卒。大手コールセンターに入社。本当の「顧客の生の声」に触れ、マーケティング・コミュニケーションの世界に魅了されてこの道18年。コンサルティング事務所、大手広告代理店ダイレクトマーケティング関連会社を経て、2005年独立起業。青山学院大学経済学部非常勤講師としてベンチャー・マーケティング論も担当。
共著書「CS経営のための電話活用術」(誠文堂新光社)「思考停止企業」(ダイヤモンド社)。
「日経BizPlus」などのウェブサイト・「販促会議」など雑誌への連載、講演・各メディアへの出演多数。一貫してマーケティングにおける「顧客視点」の重要性を説く。
◆この記事は、「GLOBIS.JP」に2009年10月9日に掲載された記事を、東洋経済オンラインの読者向けに再構成したものです。
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