失敗から学んだ「長崎ちゃんぽんリンガーハット」の大きな賭け!《それゆけ!カナモリさん》

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「長崎ちゃんぽん」の競合は、例えば「中華系の麺類=ラーメン」と仮定しよう。ラーメンの平均的な価格は、「その地域のタクシーの初乗りと同等」などといわれており、値上げしてもまだまだ競争力は保てると判断できる。

 しかし、問題は三つめの顧客視点だ。「需要志向」の価格設定という。端的に言えば、この視点は「顧客がその製品にどれだけの価値を感じてくれるか」ということである。この部分が欠落していたために、2006年の値上げによって顧客離反が相次いだと解釈できる。

 2006年以降も小麦の相場は上昇を続けた。政府の売渡価格は2007年4月に1.3%、同年10月に10%、2008年4月は30%、10月は10%値上げした。その間リンガーハットはさらなる顧客離反を回避するため、原価を価格に転嫁することをせずに踏ん張ったのである。

 しかし、相場は2008年夏から下落し、2008年6月~2009年1月の平均買付価格は、2007年12月~2008年7月より30.5%下がったのである。では、なぜこの時期に値上げなのだろうか。

 販売価格を40~100円上げるという。2006年の値上げと同等かそれ以上である。

■迫力のたっぷり野菜ちゃんぽん

 メディアの伝えるところによると、「米浜和英社長は『値下げでの集客には限界がある。時代に逆行するかもしれないが、国産野菜本来のおいしさを届けたい』と説明」(毎日新聞 2009年10月1日 西部朝刊)とある。

 不景気で財布の紐が固くなった消費者に対して、外食産業は雪崩を打って値下げ戦略をとった。しかし、それは血みどろの消耗戦を意味する。リンガーハットはそれに対して「逆張り」の戦略を展開した。
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