失敗から学んだ「長崎ちゃんぽんリンガーハット」の大きな賭け!《それゆけ!カナモリさん》
確かに、原材料価格を見ると、麺に使う小麦だけでなく、ちゃんぽんの重要な具材である野菜も、日照不足など各地で天候不順が続き高騰を続けている。原材料費全体が下がっているわけではない。しかし、それを単純に値上げするだけでないことが今回のキモなのだ。
リンガーハットは、「ちゃんぽんと皿うどんの食材の野菜すべてを国産にする(中略)『国産野菜のおいしさと安全性』を訴える『付加価値戦略』への転換」(同紙)であるとの発表している。
食の安全・安心に対する関心は相変わらず高い。
それに応えて同社は、「キャベツやもやしなど年間1万2400トンの野菜を食材に使用し、タマネギやニンジンなど2400トンは輸入していたが、今後はすべて国産に切り替える。国産野菜を安定的に確保するため、国内15道県・約40産地の農家と契約した」(同紙)と、単純な値上げではなく、自社のバリューチェーンを大きく転換している。「食の安心・安全」という、ある意味、プライスレスな価値を訴求しているのだ。
さらに細かく見てみると、なかなか芸の細かいプライシングであることが分かる。
国産化だけでなく、野菜の量を1人前当たり25グラム増量するという。野菜高騰の折、消費者にとってはうれしい限り。それに対する値上げは、「長崎ちゃんぽんの値段は東日本が500円(従来450円)、西日本490円(同)、東京都内23区550円(同)」(同紙)であるという。
これは日本マクドナルドが2007年6月から導入した「地域別価格設定」と同じだ。地域によって「いくらまで払っていいか」と感じる「需要志向」の感覚の差異を綿密に検討したものだと思われる。
さらに、「野菜の量が2倍の『野菜たっぷりちゃんぽん』(全地区650円)も新たに発売する」(同紙)という。650円といえば、なかなかの高額メニュー。高価格のメニューで利幅を稼ぐ「マージンミックス」の手法である。また、全国的に見てもほぼ、ラーメン価格の上限におさえる、「競争志向」の価格設定も意識していると考えられる。