ノジマ、スルガ銀「創業家全株」を買い取る思惑 カード事業に食指、先進フィンテック企業に

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問題発覚後、スルガ銀行側も経営陣を入れ替えて業務改善計画を公表、「創業家一族企業に株式売却と融資の全額回収を進め、創業家との資本関係を解消する」としていた。

しかし、自らも公的資金を抱えたままで、そもそも支援自体に及び腰だった新生銀行は見て見ぬ振り。そこで、支援先選定の段階から買い取る姿勢を示していたノジマが復活し、全株式を買い取ることにしたというわけだ。

ノジマの狙いは新たな銀行ビジネス

ノジマの狙いは何なのか。

関係者の話を総合すると、ノジマの最大の狙いは「カード事業」だという。

「家電量販店も飽和状態になっていて、ノジマは新たな収益源を求めていた。そこで目をつけたのが金融事業。中でもカード事業は有望で、以前から売り物を探していた。そこにスルガ銀行が出てきたので、ならば銀行ごとと考えた事情がある」(ノジマ関係者)

だが、それだけではない。

ノジマは2017年に富士通から買収した、個人向けインターネット接続事業のニフティのほか、携帯電話販売の大手代理店ITXなどを傘下に抱えている。これら企業群とスルガ銀行を有機的につなげることで、先進的なフィンテック事業を手がける銀行に生まれ変わらせる戦略を描いているようだ。

前出のノジマ関係者は「キャッシュレスやフィンテックなど、金融を取り巻く環境は激変しており、旧態依然とした銀行のビジネスモデルは早晩行き詰まる。われわれと組めば、新たなビジネスモデルを創出することができる」というのだ。

つまりノジマは、スルガ銀行を支援して傘下に収めるという“野望”を捨てていなかったというわけだ。

実はスルガ銀行も、5月に新生銀行との業務提携を発表した際のプレスリリースで、「新生銀行を含む第三者との間で、資本提携も含めたさまざまな将来の選択肢について検討を行う可能性を排除したものではありません」と記載し、含みを持たせている。

今回、スルガ銀行株の2割程度保有して筆頭株主となったことで、ノジマの発言権が増すことは必至。一度は新生銀行による支援で落ちついたスルガ銀行の経営再建だが、今後も第二幕、第三幕が繰り広げられそうだ。

田島 靖久 東洋経済 記者

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たじま やすひさ / Yasuhisa Tajima

週刊東洋経済副編集長。大学卒業後、放送局に入社。記者として事件取材を担当後、出版社に入社。経済誌で流通、商社、銀行、不動産などを担当する傍ら特集制作に携わる。2020年11月に東洋経済新報社に入社、週刊東洋経済副編集長、報道部長を経て23年4月から現職。

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