凱旋門賞で惨敗の「日本馬」に必要なものは何か 今週末の天皇賞・秋は国内最強決定戦に

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日本馬のレベルは上がっている。今年は海外GⅠを4勝した。アーモンドアイがドバイターフを、ウインブライト(牡4、美浦・畠山)が香港のクイーンエリザベスⅡ世Cを、ディアドラ(牝5、栗東・橋田)がイギリスのナッソーSを制し、10月19日にはメールドグラース(牡4、栗東・清水久)がGⅠ初挑戦でオーストラリアのコーフィールドCを制した。

2016年の海外GⅠ5勝の記録に並んで更新する可能性も十分ある。アーモンドアイは有無を言わせぬ強さでねじ伏せ、ウインブライトは馬自身の適性を見極めて結果を出した。メールドグラースは相手関係と条件を狙い澄まして圧勝した。適材適所でレース選択をして挑む。そのことで数々の成果を挙げている。

そして、ディアドラは欧州への長期滞在による調整で現地の馬場に対応できるように馬が成長した。かつてのエルコンドルパサーのような長期滞在で、ディアドラは走るフォームや馬体のたくましさなどが目に見えて変わった。体幹がパワーアップし欧州の起伏のある馬場に対応できる走りに生まれ変わった。道悪が苦手と言われていた馬が19日の英チャンピオンSでは道悪も克服して3着に好走した。

道悪の凱旋門賞で2着だったエルコンドルパサーや今回のディアドラが長期滞在で結果を出したというのは、欧州の馬場に慣れるという意味では効果的なのかもしれない。ただ、クラブ法人の所有馬が主流となっているだけに会員の負担が大きい長期滞在が可能かどうかはケースが限られる。

JRAは10月21日の関東定例記者会見で海外遠征の渡航費補助などの支援策に対して対応を検討すると答えたが、あくまで国内の競馬優先であり、決して前向きというわけではない。滞在費用を含めての負担はオーナーの熱意に期待する以外にないのが現状だ。

日本の高速馬場と欧州の力のいる馬場は異質

馬場適性の差を埋めるために考えられる方法は何か。初めてイギリスのニューマーケットでの調整をブラストワンピースとフィエールマンが選択したが、2頭が普段調整しているノーザンファーム天栄に近い環境を選んだことは否定すべきものではない。

調教技術が格段に進歩しており、それぞれの馬に合わせた調整をすればいい。決して特定のパターンがいいという問題ではないだろう。多様化してもいいはずだ。

ならば、あとは調教段階から馬場を意識した馬づくりが必要になる。JRAは安全で荒れにくくフェアな馬場づくりを掲げて、今のエクイターフでクッションが利いて馬への負担が少ない高速馬場という領域にまで高めてしまった。

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