ラグビー日本代表の会見に見た圧倒的な人間力 コメントの数々に愛される理由が詰まっていた

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その答えはラグビーというスポーツに詳しい人ほど理解できるはずです。もともとラグビーは派手なプレーが決まることはめったになく、そのほとんどが地道なぶつかり合いや仲間のサポートなど、チームに貢献するためのプレー。言わば、「チームのために自分を犠牲にすることが普通」のスポーツであり、彼らにとっての「犠牲」は世間の人々にとっての意味とはまったく異なるのです。

ルールに詳しくない人が、松島幸太朗選手や福岡堅樹選手ら快速ウイングの切れ味鋭いランや、田村優選手の多彩なキックなど、バックスの派手なプレーに目が行きがちなのは当然でしょう。しかし、そこに彼らの本質は、ほとんどありません。

フォワードを中心にすべての選手が「相手と体をぶつけ合い、密集でもみくちゃになりながらも、一瞬でも早く立ち上がり、懸命にボールをつなぎ、味方をサポートする」というプレーを連続させることが彼らの本質であり、その姿勢は犠牲そのもの。特に日本代表は、相手国の選手より体が小さいだけに、自己犠牲の姿が人々の心を打ちやすく、彼ら自身も誇りを感じられるところなのではないでしょうか。

そもそも「犠牲」というフレーズには、「ある目的のために大切なものを捧げる」という意味があり、かつて日本人の美徳とされた時代もありました。時代は流れ、個人の尊重が叫ばれる2019年に「犠牲」の姿が支持されたのは、それが古きよき日本人の気質であるからなのかもしれません。

もちろん負けたことは悔しかったはずですが、その点では最後までブレなかったからこそ、彼らは清々しい顔で会見に臨めたのでしょう。

キャラを客観視した確信犯的コメント

ラグビー人気の高まりについて尋ねられたトンプソンルーク選手、堀江翔太選手、姫野和樹選手のコメントも示唆に富んでいました。

まずトンプソン選手が、「本当に素晴らしい大会だったと思います。日本国民全員で、本当に誇らしく、みんなで一緒に一丸となって戦えた大会だと思います」とコメント。ニュージーランド出身のトンプソン選手が「日本国民全体で、みんな一丸」というフレーズを使用したことが感動を誘いました。

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