ネットに激増している「幼児の性的虐待」の実態 虐待画像や映像の数は過去最高に

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「どう対処していいのか本当にはわかっていない」と答えるのは、11歳のときに父親から性的虐待を受けて画像を撮られた女性だ。「大丈夫だ、こんなことくらいで人生を丸ごと左右されたりはしないと考えようと努力しても、写真がある以上、決して終わることはない」

ニューヨーク・タイムズの報道で明らかになったのは、子どもの性的虐待画像の問題は世界規模で広がってはいるものの、その根はアメリカにあるということだ。その背景にはシリコンバレーのテクノロジー業界が果たしてきた大きな「役割」がある。

画像の拡散を容易にしたのもテクノロジー業界なら、当局への通報を担ってきたのも同業界だ。いわゆる「児童ポルノ」はデジタル時代以前から存在するが、スマートフォンのカメラやソーシャルメディア、クラウドストレージといったツールの登場により、おそるべき勢いで増殖している。

性的虐待のハウツーの共有も

中でも恐ろしいのが、幼い子どもや、ひどいやり方での性的虐待の画像を共有することを目的としたネット上のグループの存在だ。彼らは暗号化技術と闇サイトを利用し、小児性愛者に対して性的虐待のハウツーや、虐待画像の撮影・拡散の方法を伝授している。

遅ればせながら、大手テクノロジー企業数社も自社のプラットフォームの監視強化に乗り出した。幹部らは、監視強化と通報数の急増こそ、業界が問題にいかに真剣に取り組んでいるかを示していると指摘する。

だが警察の記録や電子メール、それに地方自治体や州、連邦の各レベルの捜査関係者への取材から見えてくるのは、一部のテクノロジー企業の対応の遅れだ。当局からの問い合わせに対し、回答があったとしても数週間から数カ月かかる場合がある。問題のある画像を通報してきたはずなのに、詳細を聞くと記録が残っていないといった答えが返ってくる場合さえある。

また、テクノロジー企業が十分に協力的だったとしても、暗号化や匿名化の技術は犯罪者に逃げ場所を与えかねない。フェイスブックは3月、メッセージアプリ「メッセンジャー」を暗号化する計画を明らかにした。

昨年、メッセンジャー上で見つかり通報された児童に対する性的虐待関連コンテンツは1200万件近くに上ったと関係者は言う(フェイスブック全体では1840万件)。当局への通報は昨年、過去最高の4500万件に達したが、多くの場合1件につき2枚以上の画像が含まれている。

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