ネットに激増している「幼児の性的虐待」の実態 虐待画像や映像の数は過去最高に

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ネットにおける児童への性的搾取が増加する中、同センターの対応は後手に回っている。通報を受け、それを調べるのに使われている技術は1998年に作られたものだ。重要なアップグレードやシステムの刷新については、グーグルやビッグデータ解析企業パランティアといったテクノロジー企業の寄付に頼ってきた。

同センターによれば、2020年以降、技術面での大幅な改善を行う予定だ。だが問題はそれだけではない。警察からは最も緊急度の高い通報なのに優先的に処理されないとか、まったく間違った部署に回されたといった不満が聞かれる。また、議会からの負託を受けているにもかかわらず、公的記録に関する法律の対象になっておらず、透明性もほとんどない。

テクノロジー企業との親密性という問題

シリコンバレーの緊密な関係を背景に、同センターのガバナンスに関する問題も取り沙汰されている。センターはテクノロジー企業から、金やモノでの寄付を受けており、理事にはそうした企業の関係者も含まれる。児童の保護の分野で働いている人々に言わせれば、そうした状況では子どもの利益よりテクノロジー業界の利益のほうが優先されかねない。

テクノロジー企業との緊密な関係自体が危うくなる可能性もある。2016年に連邦裁判所は、本質的には政府のものである多くの機能を肩代わりしているという理由で、同センターを一種の政府機関であると法的に認定した。

もしこの考え方が広がれば、合衆国憲法修正第4条は政府による不法な捜索や押収を禁じているから、センターの運営のやり方も変わるかも知れない。そうした状況下では、センターと緊密な協力をする企業も政府側の関係者だと判断され、新たな法的な縛りを受けるかもしれないし、自社のサイトを監視したせいで法廷闘争になる可能性もある。

7月の日差しの強い午後。ユタ州ソルトレイクシティーに建つ壁をピンク色に塗った住宅のそばに、覆面パトカーが1台停まっていた。

パトカーの後部座席には、この家に住む男が座っていた。捜査官たちはコンピューターのハードディスクのリストを作り、ウェブの閲覧履歴を調べていた。警察によれば、男はわいせつ動画をネットに投稿していたという。

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