導入企業の規模も業種も、思いもまったく違うため、セミナーや研修は要望に合わせてカスタマイズしている。講師は、不妊症看護認定看護師や不妊治療専門クリニック勤務の臨床心理士ら。管理職向けセミナーでは座学だけではなく実際に「不妊治療中の人がいたらどういう声かけをするのがよいか」をワークショップ形式で話し合ってもらう。
「管理職世代が若かった時代は、女性は寿退社か子どもを産んだら退職していたため、具体的なイメージが湧かない。この問題には正解はなく、あくまでも、“難しい”と感じてもらうことが目的。また、社員に対してだけではなく、例えばサービス業の場合は顧客やテナントで働く女性に対するときの知識としても役立てることができる」(石川氏)
育児や介護と同じように浸透するのか?
ここで紹介したのは一部であり、かなり積極的に取り組んでいる企業ばかりだ。多くの企業は不妊治療に対してまだ取り組んでいなかったり、制度を導入していてもうまく運用できていない企業も少なくない。
厚生労働省ではこれから不妊治療のサポートを検討している企業に向け、今年度の事業として、どういう不妊治療支援制度があるかマニュアル作りを進めており、この秋、検討委員会が立ち上がった。
「最終的な目的は、仕事と治療が両立できること。企業の規模や体制で変わってくるため、必ずしも不妊治療に特化した制度でなくてもいい。例えば、1日単位しか有休が取れない企業が、2〜3時間単位で有休取得が可能になれば、通院への負担が軽減される。運用されて周知されて制度を取りやすい環境づくりが重要だ」(前出の大野氏)
また、厚生労働省 雇用環境・均等局 総務課 雇用環境・均等室 雇用環境・均等監査官 雇用機会均等課 課長補佐の元木賀子氏はこう言う。
「いわゆる昭和の時代は、大人数に対する制度を導入しておけばよかった。一括採用で、集団管理ができた。しかし、今は海外から人材を持ってくる時代。社員の退職はデメリットでしかなく、働いている人を大事にしなければならない。企業も、仕事と育児、介護、病気、とくにがんとの両立について、段階を追って取り組んできた。そして、そこに不妊治療が加わった」
今まで育児や介護など個人のことについて、企業が手を出すことではないと思われてきた。個人の問題をどこまでケアするのか――。育児や介護との両立が、社会の問題として浸透してきたように、不妊治療について関心を持つ人が増えることが次のステップに進むきっかけになる。
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