そもそもメルカリは、不妊治療補助金制度に先立って2016年2月、産休育休や介護休暇、病気やケガのときのサポートなど、ダウンサイドリスクに焦点を当てた人事制度「merci box(メルシーボックス)」を導入している。
「メルカリは優秀な人が集まっている。優秀な人は能力が高いので、いつでも辞められる。いつでも辞められる人に”ここにいることがメリット”と思ってほしい。そのために、福利厚生制度を整えている」と望月氏。平均年齢は31.9歳。不妊治療制度を導入したときには約350人だった社員数も、現在1800人を超えた。
不妊治療の休暇制度はとくに設けていないが、それはメルカリの社風に大いに関係している。「フレックス制度があっても取りにくい会社も少なくないが、メルカリでは働く日、働く内容、月間の労働時間を満たしていれば、フレキシブルに働ける裁量が個人にある。基本的にコアタイムだけいれば問題なく、上司の承認さえあれば自宅作業もOK。治療のためにわざわざ有休を取らなくても通院も可能だ」(望月氏)
外部の制度を利用する企業も
すべて自社で行う企業ばかりではない。LINEなどを活用し、妊活や不妊治療に関するアドバイスを利用者に届ける妊活コンシェルジュサービスの「famione(ファミワン)」には、この1年で企業からの問い合わせが増えているという。
ファミワンの石川勇介代表によると「数年前はこちらからアプローチしても、『必要ない』『産業医に確認しても、そういった需要はあがっていない』と門前払いだった」が、ここに来て引き合いが増えているのだという。
すでに導入・提供している企業は、小田急電鉄、全日本空輸(ANA)、伊藤忠商事労働組合など、さまざまな業種の大手企業が並ぶ。
ファミワンが提供する企業向けサービスは大きく分けて3つある。
1つ目が、妊活コンシェルジュサービス有料版を希望する社員が無料で使え、大人数セミナーや各種研修、個別カウンセリングなども行うフルパッケージのもの。2つ目が、単発のセミナーと「自由相談チケット」のクーポンコードがセットになったもの。3つ目が「自由相談チケット」だけを付与するパターンだ。
チケット使用時に、名前と社員コード、本人かパートナーかの選択のみ情報入力が必要になるが、これは在籍確認のため。人事部の担当者にしか伝わらず、上司に知られる心配はない。当然のことながら相談内容は完全非公開だ。
現状多いのは2つ目のパターンだという。「最近はダイバーシティー関連で取り組まなければならないことがたくさんある中で、『なぜ妊活なのか? 介護やがんなどの病気のほうが大事』と言われることもあり、現状2つ目の単発セミナー+自由相談チケットの組み合わせを導入し、様子見からスタートする企業が最も多い」(石川氏)という。
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