ロシアに根づく偏見
そもそも、なぜ、ロシアで、こうした法案が提出され、成立したのでしょうか。私は、根底には同性愛者に対する根強い偏見があると思います。これはロシアに限ることではありません。実際この法案も、ある地方行政区から始まって国レベルに発展した、ある意味、草の根レベルの政治運動であると聞いています。世界中でまだ同性愛ということ自体が、犯罪行為だと法律で定めている国がたくさんあります。
そんな中、日本政府はというと、実は公式にはLGBTの人権擁護を積極的に進める意向を外交の場で示しています。日本は国連の「LGBTコア7カ国グループ」のメンバーで、アジアからは唯一の参加国です。日本の国連大使は昨年9月、国連本部(ニューヨーク)で行われた閣僚級会合で、明確に「性的指向や性自認に基づく暴力や差別、そして差別的刑罰などLGBTに対するあらゆる形態の人権侵害を撤廃すべき」とはっきり述べています。2020年の東京五輪は、LGBTを含め、あらゆる人にフレンドリーな大会にして、世界にリーダーシップを示してもらいたいと思います。
企業レベルではついにオリンピック米国チームのスポンサーで、米国の電話会社AT&Tがロシアの状況に懸念を示し、この法律を非難する声明を出しました。米国の政府や企業の動きは、米国内のLGBTの当事者団体が積極的にロビー活動した結果、選挙の票や消費者の購買行動を気にして出てきた動きだとも言えます。
日本ではどうでしょうか? まず外資系の中から、LGBT支援の動きが出てきています。化粧品会社のLUSHでは、2月2日に新宿でロシアに対して抗議するイベントを開催しました。異性同士でも、同性同士でもカップルや個人が、いろんな形の愛を認め合うことをKISSする写真という形にして、それをロシア大使館に提出するというアピールをするようです。 しかし、日本ではまだまだこのような取り組みは始まったばかりです。
世界的には米国を中心に企業のLGBT従業員に対する取り組みが急速に進んでおり、日系企業も例外ではありません。米国ではHuman Rights Campaignという会社が、各会社のLGBTに対する取り組みをIndex化し、発表しています。メーカーなど、日本企業で米国で事業展開をする会社も含まれています。特にトヨタは最も得点が高い100ポイントを獲得していて、こうした取り組みは、会社側も積極的にアピールし、当事者の団体のサイトなどでも取り上げられています。