医師との会話がどうしても「ズレまくる」理由 「合併症」「確率」などの言葉にご用心

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例えば合併症の起こる確率が10だとする。これは、「縫合不全が起こる可能性が10%ある」ということでもあるのです。しっかり縫っても、不十分であることが10%(術式による)は起こるものなのです。もちろんうまければその確率は下がりますが、ゼロにはできません。そういうものを合併症といいます。ミスとは明らかに関係ない流れで起きた悪い状態を指します。

とはいっても、「合併症だから問題ないし、医者は何もしなくていい」と言いたいのではありません。言い訳しているのではなく、そもそも意味が違うということです。

もっとほかに方法はなかったか検証したり、医療従事者同士で情報をシェアすることは大切です。

医療用語は患者に正しく理解されようと作られていない

「確率」も、患者さんと医者では感じ方がだいぶ違います。「99%命が助かる」と言われたら、どう思うでしょうか? 「まあ、自分は助かるだろう」、患者さんはそう思うかもしれません。

でも医者は「100人に1人は死ぬのか」と思います。

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99.9%問題ないといわれたらほぼ問題ないと思うでしょう。しかし手術を年間1000件以上やっていると、0.1%の確率による悪いことは毎年起こるわけです。患者さんとしては「ほぼ成功する手術ですから問題ないです」と言われているように感じるでしょうが、医者としては「1000人に1人は何かあるので、その覚悟をもってください」という意味で言っています。

「確率」というのは一見公平な表現のようですが、これでしか表現できないのが医療なのです。しかし「確率」の解釈の仕方で違いが生じるのは、医療に限った話ではありません。降水確率何%なら、傘を持っていくでしょうか? 50%を超えてようやく持っていく人もいれば、20%でも折り畳み傘くらいはバッグに入れる人もいるでしょう。

なぜこのように基本的な用語で認識がずれてしまうのかというと、医学の世界は「科学的に議論しやすいように用語を作っている」ので「一般に理解しやすいように用語を作っていない」からなのです。

平松 類 眼科医/医学博士

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ひらまつ るい / Rui Hiramatsu

愛知県田原市生まれ。昭和大学医学部卒業。現在、昭和大学兼任講師、彩の国東大宮メディカルセンター眼科部長、三友堂病院非常勤医師・眼科専門医・緑内障手術機器トラベクトーム指導医として勤務している。延べ10万人以上の老人と接してきており、老人患者が多い病院の眼科医として勤務してきたことから、老人の症状や悩みに精通している。医療コミュニケーションの研究にも従事し、シニア世代の新しい生き方を提唱する新老人の会の会員でもある。専門知識がなくてもわかる歯切れのよい解説が好評で、連日メディアの出演が絶えない。

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