“感動”しながらのプレーが次へとつながる

プロゴルファー/青木 功

  今年の夏の高校野球の結果は、アメリカで知りましたが、新潟県代表の日本文理高校が決勝戦では敗れたものの、だいぶ大会を盛り上げたようですね。中学生のころ野球少年だった私は、やはり春や夏の甲子園が気になるんですよ。でも、大会の1回戦から決勝戦までの全部を見たことはありません。たいがい、途中で海外に出かけるからです。

ところで皆さんは、高校野球はどうしてあんなに多くの人の気を惹くと思いますか。私なりの解釈は、選手たち自身が甲子園でプレーをしていることに感動しているからだと思うんです。
 彼らは子どものころから野球を始め、将来の夢は甲子園。そう思いながらきつい練習に耐え、甲子園に出場、いま自分はその夢の場所にいる--。そう思いながらプレーをしているから、選手の動き一つひとつに感動と真心がこもり、そんな姿が見ている人の心につながる、私はそう感じるんです。ゴルフで言うと、マスターズや全英オープンですね。メジャー大会はゴルフをよく知ったギャラリーに後押しされることがあるんですが、予選ラインのはるか遠くの成績でも、ワンストロークたりともおろそかにしない、真心こもったプレーになります。

スポーツ選手にとって怖いのは、戦う相手ではなく、試合慣れした自分なんです。試合での調子を勝手に自分で判断し、楽な気持ちでプレーをしようと考えてしまうことです。すると、そうした思いは見ている人にもわかってしまいますから、熱心に応援する気持ちがなくなるんですね。
 一打入魂、スポーツ選手はこれを失うと将来がありません。どんな場面でも可能性を求める、上を求める、これが次につながるんです。夏の甲子園はそんな少年たちの集会場、そんなふうに見えるんです。

その少年たちと同じ年頃であるプロゴルファーの石川遼くんは、プレーぶりが甲子園の選手たちとまったく同じです。彼のプレーに注目してください。優勝争いをしているときと、はるか予選ラインに届かないときでもワンストロークに懸ける情熱は同じなんです。彼は学ぶことに貪欲です。

プロゴルファーは、クラブを持つ手、その手がしっとりしていないと、しっかりとしたグリップができません。昨年のダンロップフェニックスで遼くんに会い、握手してみると手のひらがカサカサしていたんで、言ったんです。
 「手のひらにクリームをベットリつけて寝たらいい」。年齢が遠く離れた先輩プロが言った言葉、聞き流してしまってもいいんです。しかし、遼くんは実行するんです。向上心が旺盛な選手なんです。

私の自慢話をさせていただくと、「選手生命が長い秘訣は」との質問に対しては、「高校野球の選手と同じ、いつも感動を覚えながらプレーをしているからです」と、答えています。

プロゴルファー/青木 功(あおき・いさお)
1942年千葉県生まれ。64年にプロテスト合格。以来、世界4大ツアー(日米欧豪)で優勝するなど、通算85勝。国内賞金王5回。2004年日本人男性初の世界ゴルフ殿堂入り。07、08年と2年連続エイジシュートを達成。現在も海外シニアツアーに参加。08年紫綬褒章受章。
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