日本人が新婚旅行に「危険地域」を選ぶ非常識 こんなにも国際ニュースに無関心でいいのか

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さて、昨今どの国でも否定的になっている移民問題。アメリカではトランプ大統領がアメリカと隣国のメキシコの間に壁をつくると繰り返し宣言していますし、EUにおいてはシリア難民の受け入れが最も重大な政治問題になっています。2018年のアメリカの難民受け入れ数は2万2491人で、過去40年において最少です。

そんな状況下、実はカナダはこれらの国とは真逆の方向に進んでいます。移民や難民の受け入れに大変オープンで、世界経済フォーラムによると2017年の難民受け入れ数は4万4000人で、2021年の難民受け入れ目標数はなんと6万4500人です。

さらに2019年から3年の間に100万人の移民を受け入れる予定。その半分ほどはカナダ政府が発表している「不足している技能職」のスキルや経験を持つ人であり、熟練労働者や高度技能職です。

この受け入れはカナダ特有の事情と関係があります。人口が少ないうえに高齢化が進んでいること、さらに寒冷地ということが追い討ちをかけ、好条件にもかかわらずスキルを持った人材が不足していることなどから、世界各国からなるべく優秀な人を受け入れたいという意向が下地になっているのです。

ほかの国が反移民、反難民という方向に進んでいるにもかかわらず、まったく正反対をいくカナダ。その経済状況がよく、労働の多様化にも成功しているというのは、なかなか興味深いのではないでしょうか。

クリティカルシンキングを身に付けよ

本来、海外のニュースに目を通し、経済統計などをざっとでも見る習慣があるのであれば、うわべだけのイメージに捉われず、真実を把握することができるのです。つねに「これは正しいか?」「別の考え方はないか?」「この著者がこのように主張する理由は何か?」「このタイミングでこの情報が出るのはなぜか?」などと疑問を持ちながら情報を整理していくことが大切です。

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この手法になじみのない日本では、このように問われると、けんかをふっかけているのか、自分の意見を否定しているのかなどと捉える人がいますが、そうではありません。議論を深めるために異なる考え方、異なる方向性を提示し、そのうえで「あなたはどう思うか?」と質問しているだけなのです。

このような方法を英語圏では「クリティカルシンキング」と呼びます。情報や他人の意見を批判的な視点で分析する方法ですが、議論展開をする際の基本となっています。意見をたたかわせるとか、そこから新しい発想を得るには必須の手法です。

クリティカルシンキングのスキルを鍛えるには、論理的な思考を養うのが近道です。ニュースや物事を目にした際には理論的に考えてみて、なにかおかしなところはないかと問うところから思考が始まるからです。

谷本 真由美 著述家、元国連職員

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たにもとまゆみ / Mayumi Tanimoto

1975年、神奈川県生まれ。シラキュース大学大学院にて 国際関係論および情報管理学修士を取得。ITベンチャー、コンサルティングファーム、 国連専門機関、外資系金融会社を経て、現在はロンドン在住。日本、イギリス、アメリカ、イタリアなど世界各国での就労経験がある。ツイッター上では、「May_Roma」(めいろま)として舌鋒鋭いツイートで好評を博する。

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