「大学の貧困」が「国難」につながる深い理由 「科学立国危機」に文科省が行うべき改革とは

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次に研究時間です。大学研究者の研究時間について、文部科学省は2002年、2008年、2013年の3度にわたって調査し、推移など結果を分析しています。大学等というのは大学と大学院のことです。

2002年の調査では、研究者の研究時間は平均で職務時間の46.5%でした。大学では研究のほか、講義や学生の指導などの教育活動の職務もあるため、まあ、そのくらいなのかなという印象です。ところが、2008年の調査では36.5%に激減しています。

2013年の調査でも35.0%です。2002年と2008年の間に何があったか。もちろん、国立大学の法人化です。国立大学法人化の前と後では、大学研究者の研究時間が25%減少しました。

現場から聞こえてくる悲鳴

研究時間の減少について、現場の研究者の不満や危機感は限界水域に近づいています。NISTEPのアンケート調査がそれを示しています。

「研究時間は十分か」と問う質問はありませんが、「研究者の研究時間を確保するための取組(組織マネジメントの工夫、研究支援者の確保等)は十分だと思いますか」という質問があります。

取組みが不十分と評価している人は全体の89%を占めます。質問は研究時間を確保するための取り組みについての評価ですから、もし、ストレートに「研究時間は十分にありますか」というような質問であれば、不十分と回答する人の割合はもっと高くなったであろうことは容易に推察できます。9割より高くなるとすれば、それはもうほぼ全員です。

記述式の回答からは、悲鳴が聞こえてきます。

「教育や研究のための予算獲得に優秀な研究者の貴重な時間がすり減らされている」
「大学の運営や事務的な仕事が多く、研究なんてほとんどできない」
「収益重視が徹底されているため、どんどん研究時間を削らなくてはならない状況が深刻化している」
「どうもできない。時間がなさすぎる」

ご紹介したのは、いずれも大学教授の回答です。

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