統合により各大学の経営基盤が強固になれば、厳しい状況下にあっても経営・運営における持続性を高めることができ、「街としての持続性」の維持に貢献することができる。
「地場経済の振興」という点でも統合によるメリットは大きい。現在、準備が進んでいる名古屋大学と岐阜大学の経営統合では、新たに設置される「東海国立大学機構」のスタートアップビジョンの中で、2つの大学に一定レベルで一気通貫のガバナンスを利かせ、従来は各大学に閉じがちであった研究・教育活動に大学を跨いだ連動性を持たせることを目標に掲げている。
具体的には名古屋大学が培った研究成果と、岐阜大学が培った研究成果を組み合わせることで社会実装可能なカタチまで拡大し、それらを東海圏の産業発展に生かしていくという戦略である。
東海地域は歴史的にもモノづくりに強みを持つが、デジタルによって時代が様変わりするなかで、各社が新たなイノベーションを欲している地域でもある。東海国立大学機構が地場企業との連携を深めることによって、東海地域発のイノベーション、ひいては新たな主要産業が生まれる日も近いように感じる。
「国際性の向上」という点でも、統合効果は高い。東海国立大学機構では地域創生とともに、国際競争力強化を目標に掲げている。世界でも指折りのモノづくり地域に新たなイノベーションが生まれるということは、グローバルでの競争を勝ち抜いているという前提が存在する。
そのため、地域創生を突き詰めていくことによって、自然とグローバルとの連携が増え、地域としての国際性を豊かにしていくというストーリーとして併せ持っているのだ。
デジタル化の波が押し寄せる現在では、国内のどの地域にあっても地方創生に向けた視野はグローバルに置かざるをえない。地方創生を考える際には、国際的な活動経験が豊富な大学を中心に据えれば、成功する確率も高まるはずだ。
地域を越える統合が自治体再編の呼び水に
そして、大学間の統合や合併は、地方創生だけでなく、「地方再編」のきっかけにもなりうると考える。
東海国立大学機構の場合、県(自治体)を超えるという点で従来の国立大学のあり方に一石を投じるものになっている。
元来、国立大学がその地に設置されてきたのには背景がある。国立大学改革の中で、国立大学の半数以上が、「地域ニーズに応える人材育成・研究を推進」することをミッションとして再定義している。今回の2大学の統合では愛知県・岐阜県とこれまで別々の地域にあった大学が県を跨いで東海国立大学機構という1つのガバナンスの下で運営されていくことは大きな意味を持つ。
行政区画を広域化し、より高い地方自治権を与えることによって行政の効率化を図ることなども、地方創生と並列で議論されているが、一足先に国立大学が実現する形になり、この成否いかでは大学に経営統合のあり方のみならず、地方創生を狙いとした地方再編のモデルケースになりうるポテンシャルを秘めている。
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