関西電力、「第三者調査委員会」に限界あり 善管注意義務違反や贈収賄疑惑にメス入るか
2014~2017年にかけて関電から吉田開発に発注された工事金額はおよそ51億円にのぼる(ゼネコン経由分を含む)。この間に関電の首脳らには、森山氏から多額の現金や商品券のほか、アメリカドルや金貨などが渡されていた。それどころか、吉田開発から直接、現金や商品券を受け取っていた役員もいた。
もっとも、このような不明朗な金品のやりとりが続けられてきたにもかかわらず、記者会見の場で関電の岩根茂樹社長は「不適切ではあったが違法ではない」などと断言。八木誠会長(10月9日付で辞任)も「金貨や金品の出どころについては、まったく承知していない」と強弁した。
問題が多い監査役の対応
「違法ではない」との認識を貫くことで、岩根社長は内部調査委員会による調査結果を、自らが委員長を務める「コンプライアンス委員会」に報告していなかった。
監査役の対応にも問題が多い。関電によれば、常任監査役には内部調査委員会の調査結果が2018年10月に報告され、その後、常任監査役は監査役会などを通じて社外監査役にその内容が報告された。しかし、常任監査役は自ら調査に乗り出すことをせず、取締役会に報告していなかった。会社法では、社長を初めとした取締役が不正行為をしたり、法令・定款違反の事実もしくは著しく不当な事実があると認めるときには、遅滞なくその旨を取締役会に報告しなければならないと規定されているにもかかわらず、である。
また、関電の監査役は、一連の金品授受などの不正について、監査報告書にも何一つ記載せず、株主総会にも報告していなかった。
このような実態をとらえて、前出の上村名誉教授は、「関電の監査役は会社の業務について調査し、報告する権限を持つにもかかわらず、その権限を行使せず、本来の責任を果たしていない」と批判する。そのうえで、「明確な調査権限を持つ監査役が中心になって調査委員会を組織するのが本来のあり方だが、関電にはその姿勢が欠如している」(上村氏)という。
関電は、会社から独立した社外委員(弁護士)のみから構成される第三者調査委員会を10月9日付で設置し、真相究明に取り組む方針を明らかにした。金品受領問題が発覚した当初、八木会長と岩根社長の続投を表明していたが、内外の批判を受けて、八木会長ら金品を受領していた役員の同日付での辞任を急遽発表。岩根社長も第三者調査委員会の報告書公表を踏まえ、年内にも辞任する意向を示した。
第三者調査委員会の委員長に但木敬一弁護士(元検事総長)を選任したことについて岩根社長は9日、「当社との利害がなく、独立した立場の社外の弁護士で、客観的な調査・検証を徹底して実施していただけると考えている」と述べた。ただ、委員会の調査権限は不明確で、金品授受の違法性についてどこまで踏み込んで調査できるかも定かでない。
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