値上げ頼みの電力決算、始まった深刻な客離れ 重たい原発の維持コスト

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火山対策などが不十分と批判されながら、再稼動に踏み切った九州電力の川内原子力発電所(撮影:尾形文繁)

「ラッキーな要因があったことは間違いない」と、東京電力の廣瀬直己社長は2016年3月期上期の決算発表の席でそう語った。14年末からの原油価格下落によって燃料費が急減。電気料金改定までの「制度上のタイムラグ」(東電)による差益が、2210億円にも膨れ上がったためだ。

上期は一過性のタイムラグ差益が膨らむ

こうした原油価格下落によるタイムラグ差益は、LNG(液化天然ガス)など原油連動の燃料比率が高い、中部電力や関西電力など大手でも大きく、上期にそれぞれ1050億円、680億円に達し、利益押し上げ要因になった。

電力10社合計で見ると、連結純利益は上期だけで、東日本大震災・福島第一原子力発電所事故前の10年3月期通期の数字を上回った。

東電は連結経常利益で過去最高。中部電力は連結、単独決算とも各利益段階で最高益を更新。東電では目標とする、単独自己資本比率15%への回復が見えてきたことを踏まえ、17年3月期中に社債市場への復帰を目指している。

東京電力の廣瀬直己社長は上期の「過去最高経常利益には「ラッキーな要因があった」としている(撮影:風間仁一郎)

もっとも、タイムラグ差益を除いた実態は、各社とも薄氷を踏む状況が続く。

関電では、タイムラグ差益と再値上げ(大企業向けは4月、家庭向けは6月から)による増益分を差し引くと、連結営業利益は600億円に満たない。中部電力では「タイムラグ要因と豊富な降水量による水力発電の増益分を除くと、実質的な単独経常利益は前期並みの400億円程度」(勝野哲社長)という。

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