値上げ頼みの電力決算、始まった深刻な客離れ 重たい原発の維持コスト

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厳しい状況の電力会社を救ったのが電気料金の値上げだった。13年3月期から3期にわたり、北陸電力、中国電力、沖縄電力を除く7社が値上げに踏み切った。関電と北海道電力では値上げは2度にわたり、料金が自由化されている企業向けでは、値上げ幅がそれぞれ累計30%弱、30%強にも達した。料金が規制された家庭向けでも各20%弱、20%強の値上げとなった。

だが、値上げは同時に、深刻な顧客離れを引き起こす。

購入電力が割高になったことから、官公庁や大企業から電力供給契約の解約が相次いでいるのだ。顧客離れについて、電力各社は「契約の離脱」という表現を用いているが、12年3月に始まった電力の部分自由化以降の累計で、東電では離脱が4万8250件、880万キロワットに達した(9月末現在)。大口需要を中心に、ガス会社や石油会社系列の新電力などから、契約を奪われたことを意味する。

大手において特に大規模な離脱が続く

離脱は特に大手において深刻。中部電力では約1万0200件、167万キロワット(9月末までの累計)、関電で1万2529件、265万キロワット(3月末までの累計、4月以降分は非公表)に上る。

さらに厳しいのは、この上期も、大規模な離脱が続いていることだ。東電では半年間で6450件、130万キロワットの純減となっている。

こうした中で16年4月には、家庭向けを含めて電力の小売り全面自由化がスタートする。再稼働の見通しが立たず、“金食い虫”と化した原発を抱えたまま、電力各社は厳しい戦いを強いられる。

「週刊東洋経済」2015年11月21日号<16日発売>「核心リポート02」を転載)

岡田 広行 東洋経済 解説部コラムニスト

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おかだ ひろゆき / Hiroyuki Okada

1966年10月生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。1990年、東洋経済新報社入社。産業部、『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部、企業情報部などを経て、現在、解説部コラムニスト。電力・ガス業界を担当し、エネルギー・環境問題について執筆するほか、2011年3月の東日本大震災発生以来、被災地の取材も続けている。著書に『被災弱者』(岩波新書)

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