値上げ頼みの電力決算、始まった深刻な客離れ 重たい原発の維持コスト

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為替や燃料価格の変動を電気料金に反映させる、「燃料費調整制度」のタイムラグ差益は、原油価格の変動幅が足元では小さくなっているため、今下期には大幅に縮小するとみられる。その一方で、火力発電所の修繕費や、電力小売り全面自由化を目前にしたシステム構築費用などが、利益の圧迫要因になる。

各社にとって、とりわけ頭痛の種となっているのが、原発再稼働の道筋がなかなか見いだせないこと。上期には九州電力の川内(せんだい)原発1号機が営業運転にこぎ着けたものの、九電と、伊方(いかた)原発3号機の審査が進んでいる四国電力を除けば、再稼働は見通しが立っていないのが実情だ。

原発維持に年1.4兆円がかかる

前期は原発による発電量がゼロ(=売り上げゼロ)にもかかわらず、原発部門の維持に、原発を持たない沖縄電力を除く9社合計で、1兆4000億円超の費用がかかった。今期も同じ水準かそれを上回る費用が発生する。

一方で、原発については原子力規制委員会による新規制基準への適合性審査が進められる過程で、耐震補強などの安全対策工事に伴う支出も膨らみ続けている。

この9月末時点でも、東北電力で、女川(おながわ)、東(ひがし)通(どおり)の両原発に関する安全対策工事費(多くが設備投資)の見積額が、従来の1500億円程度から「三千数百億円」(東北電力)にハネ上がった。北陸電力や四国電力も増額を迫られ、9社全体の安全対策工事の所要額は3兆円を上回る規模に膨れ上がっている。今後、再稼働が進んだ場合には、減価償却費の急増となって損益に跳ね返ってくる。

それでも各社が原発再稼働を業績回復の頼みの綱にするのは、前出の1兆4000億円超というコストの重さによるところが大きい。

東日本大震災前の10年3月期単独決算では、原発の稼働によって約4兆円の電気料金(本誌推定)を稼いだ反面、ウラン燃料の消費を含む原発のコストは約1兆7000億円だった。それが「原発稼働ゼロ」の15年3月期では、原発による電力の売り上げがゼロだったのに対し、原発の費用は約1兆4000億円。差し引きで年間約4兆円の収支悪化である。通常の企業であれば、倒産に追い込まれるインパクトの大きさだ。

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