日本が及ばない「シンクタンク超大国」の実像 アメリカで国際政治の舞台に、監視も厳しく

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宮田:ワシントンの論調が急激に変わった背景をどのようにお考えですか。

船橋:1つは、サイバーセフト(経済・金融情報の窃盗)だと思います。年間総計で3000億ドル相当が盗まれたとか、ステルス戦闘機の設計図が盗まれたとか言われています。要するにアン・フェアだという憤りです。もう1つは、2015年に発覚した、サイバー攻撃によってアメリカ連邦政府人事管理局から職員・元職員の個人情報がごっそり抜き取られた事件ですね。契約社員や応募者まで含めると2150万人分の情報が流出したと言われています。中国政府はもちろん認めていませんが、アメリカは中国政府の仕業と見ています。あの事件あたりを境に連邦政府の中堅の職員も、「中国は敵」と思うようになったのではないでしょうか。

宮田:それが大きな岐路だったと。

船橋:はい。昨年10月のペンス副大統領のスピーチは、まさに時代を画するスピーチだったと思います。それまでの不満と不信が一気に噴出した、中国に対する新しい姿勢というか態度がここで超党派的に生まれた契機だったと見ています。

第三時代へと向かうシンクタンク

船橋:最後にもう1つ、伺います。今後の研究テーマは何ですか

宮田:まずは今、起こっていることを丁寧に見ていかなければと考えています。拙著の記述はオバマ政権時代で終わっていますから、トランプ時代については触れることができませんでした。

アメリカのシンクタンクは、純粋な政策研究が主流だった第1時代から、政治的に活動的な富裕層の登場を背景に特定の政治活動を推進するシンクタンクが次々と生まれ、政策に強い影響力を持つようになった第2時代へと変遷してきました。しかし、トランプの出現でその影響力は弱まっているのかもしれません。トランプ政権はシンクタンクを重視していませんから、もしかするとトランプ時代はシンクタンクにとっての第3時代となる可能性があります。そのあたりことを注意深く見ていく必要があると思っています。

船橋:トランプ時代のシンクタンクですね。ワシントンのシンクタンクの友人たちもどう扱ったものか、どう戦うべきか、まだゲーム・プランができないのではないでしょうか。どうなるのか……早く読みたいなあ。拙速でもいいですから、できるだけ早く出版してください、お願いします。

船橋 洋一 アジア・パシフィック・イニシアティブ理事長

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ふなばし よういち / Yoichi Funabashi

1944年北京生まれ。東京大学教養学部卒業。1968年朝日新聞社入社。北京特派員、ワシントン特派員、アメリカ総局長、コラムニストを経て、2007年~2010年12月朝日新聞社主筆。現在は、現代日本が抱えるさまざまな問題をグローバルな文脈の中で分析し提言を続けるシンクタンクである財団法人アジア・パシフィック・イニシアティブの理事長。現代史の現場を鳥瞰する視点で描く数々のノンフィクションをものしているジャーナリストでもある。主な作品に大宅壮一ノンフィクション賞を受賞した『カウントダウン・メルトダウン』(2013年 文藝春秋)『ザ・ペニンシュラ・クエスチョン』(2006年 朝日新聞社) など。

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