宮田:船橋さんのシンクタンクでも人材育成を重視されていますね。
船橋:はい。お2人のスタートアップ起業家にご支援いただいて、ロンドンのシンクタンクにAPIの若手の研究者を派遣するプログラムを来年発足させます。世界有数のシンクタンクで鍛えていただいて、戻ってきてからグローバルに活躍してもらおうと思っています。
アメリカ国内で監視が厳しくなった外国マネー
船橋:ところで、このところアメリカのシンクタンクに対する風当たりが強まっているようです。
宮田:先ほどのシンクタンクが国際政治の舞台、あるいはプレイヤーとなっているという話に関係しますが、私が近年関心を抱いているのは、アメリカ国内で、シンクタンクと外国政府の関係を監視する目が厳しくなっていることです。
船橋:そうですね。
宮田:アメリカでは、数年前から、外国マネーがシンクタンクの研究を左右しているのではないかという疑念が生まれています。シンクタンクが外国政府の資金提供を受けて研究すること自体は今に始まったことではありませんが、メディアがそれを追及するようになってきています。
例えば、昨年のカショギ事件(サウジアアラビア人ジャーナリスト、ジャマル・カジョキ氏がトルコのサウジ総領事館内で殺害された事件)の際には、ブルッキングズがサウジから資金提供を受けているという記事が出ました。あるいは、米中関係では、ファーウェイからアメリカのシンクタンクに資金が流れているという情報が取りざたされました。
そうした風潮は軽視しないほうがよいと考えています。シンクタンクの信頼性とか信用度とかを崩すことになりかねない危険性をはらんでいます。
船橋:サウジだけでなく、UAEなどの湾岸諸国に、各国大使館が林立するワシントンのマサチューセッツ通りが汚染されているという揶揄は、オバマ政権時代からありましたね。とくに、9.11以降、サウジアラビアマネーに対する国民やメディアの目は大変険しくなっていると感じます。サウジマネーはもうイエローカードだと。
さらに、チャイナマネーについては、レッドカードの域に近づいていますね。アリババ(中国の情報技術会社)を率いるジャック・マーは、かつては、シリコンバレーの経営者に匹敵する立派な経営者だとアメリカでも高い信頼を得ていましたが、習近平体制で、そうした評価が変わりつつあるようです。もはや、中国に正真正銘の民間企業などないという評価に変わり、ジャック・マーの金も共産党の金と本質は同じだとする警戒感が高まっているように感じます。
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