船橋洋一(以下、船橋):クーさん、今日はありがとうございます。クーさんとは、プラザ合意の舞台裏を描いた『通貨烈烈』を出版した後、一緒に勉強会を開いていた頃からのご縁です。
リチャード・クー(以下、クー):本当にお久しぶりです。もう、10年ぐらい経ちますか。
船橋:いや、もっとです。ですが、クーさんの発表されたものはほとんど読んできました。最近も『インターナショナルエコノミー』の「アジアのプラザ合意」も読みました。アジア諸国の経常黒字とアメリカの経常赤字が続く限り、世界経済は安定しない。「プラザ合意」(1985年、G5蔵相・中央銀行総裁会議が合意した為替レート安定化に向けた協調政策の通称。ドル高でアメリカの貿易赤字が膨らんだ状況下、自由貿易を守るため、各国が協調しドル安を誘導する合意だった)のように大胆に為替をリアレンジメントしないと、安定は保てないという主張でした。
プラザ合意の時代はG5で、西側だけで完結する世界でしたが、今は中国やロシアも世界経済に強い影響力を持っています。その時代に、協調政策を実施することが可能でしょうか。
貿易の不均衡は為替調整で解決できる
クー:そのアイディアを最初に提案したのは10年前です。そのとき、当時人民銀行総裁だった周小川さんに興味を持っていただいて、北京で3時間ほど議論しました。彼は、鄧小平が生きていたら、5分でこの提案に乗ると。
船橋:でも、今は鄧小平がいないし、鄧小平路線を否定するような政権になっていますよね。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら