「赤字国は怠け者で黒字国は勤勉」という大誤解 自由貿易体制の堅持には為替調整が必要だ

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船橋:今では「ジャパナイゼーション」という言葉が世界的に相当広がって、ゼロ金利でも簡単にはインフレターゲットを達成できない、ということが認識されるようになりましたね。

けれど、これほど財政が悪化している状況では、ほかに打つ手はないでしょう。

低金利は公共事業のチャンス

クー:それはマーケットに聞いてほしい、と私は思います。もし、経済学者たちが言っているように財政が本当に限界なら、長期国債の金利の低水準を説明することはできません。

財政が本当に限界であるならば、10年後には破綻するかもしれません。つまり、政府の信用力は著しく低下します。ですから、10年国債はリスクの高い商品となり、金利は15%ぐらいついているはずです。かつてのイタリアはそうでした。

しかし、実際には今の日本の国債の長期金利はマイナスです。公的債務がGDPの250%もある国で、国債の利回りがマイナスという事態をどのように説明するか。実は、バランスシート不況の理論で考えると、簡単に説明できます。

バランスシート不況下では、企業からの借金返済と新たに入ってくる貯蓄、さらにはインフレターゲットに向かって中央銀行が送り込んでくるお金が、金融界に流れ込んできます。金融事業者はこれを運用しなければなりません。

しかし、バランスシート不況で民間には借り手はいないわけですから、結局、借り手は政府だけ、つまり、本当は嫌かもしれないけど、国債を買うしかないのです。金利が下がる理由はそれで説明できます。これは日本だけの現象ではなく、アメリカでもヨーロッパでも同じことが起こっています。

ですから、経済学者は財政再建を言いますが、私は今は公共事業のチャンスだと思います。金利なしで国債が売れるわけですから、金利を支払わなくていいなら赤字にならない公共事業はあるはずです。それを見つけることができさえすれば、将来の負担のない財政支出ができ、景気刺激策にもなるはずです。

船橋 洋一 アジア・パシフィック・イニシアティブ理事長

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ふなばし よういち / Yoichi Funabashi

1944年北京生まれ。東京大学教養学部卒業。1968年朝日新聞社入社。北京特派員、ワシントン特派員、アメリカ総局長、コラムニストを経て、2007年~2010年12月朝日新聞社主筆。現在は、現代日本が抱えるさまざまな問題をグローバルな文脈の中で分析し提言を続けるシンクタンクである財団法人アジア・パシフィック・イニシアティブの理事長。現代史の現場を鳥瞰する視点で描く数々のノンフィクションをものしているジャーナリストでもある。主な作品に大宅壮一ノンフィクション賞を受賞した『カウントダウン・メルトダウン』(2013年 文藝春秋)『ザ・ペニンシュラ・クエスチョン』(2006年 朝日新聞社) など。

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