仕事の仕方、学習方法、生活様式……ロボットによって今後、あらゆるものが激変するだろう。だが、世の中がより生産的かつ安全で便利になると期待される一方で、新しいテクノロジーは雇用への不安をかき立てている。
こうした不安を増大させているのが、英オックスフォード大学のフレイ博士とオズボーン准教授の共同研究、そしてマッキンゼー・グローバル・インスティテュート(MGI、コンサルティング会社マッキンゼーのシンクタンク)による最近の調査だ。
「技術的失業」に対する不安は的外れ
MGIの調査は、先進国、途上国の双方で雇用の大部分がロボットによって置き換えられる可能性があるとしている。だが、技術的失業(約1世紀前に経済学者のケインズが作りだした言葉)に対する不安が的外れであることを、歴史や経済理論は示唆している。
過去にそうであったのと同じように、将来、技術的な変化によって生産性向上と所得の拡大がもたらされ、労働需要は引き上げられる可能性が高い。新しく生み出される仕事の多くは、現時点においては想像すらできないものとなる。
MGIの調査によれば、2030年までに世界の労働力人口の約15%、約4億人の仕事が機械によって置き換えられる(中位シナリオ)。自動化が急速に進めば、その人数も増え、最大8億人の職が奪われると試算されている。
ありがたいことに、所得上昇による総需要の拡大や、高齢化に伴う医療需要の増加などによって新しい職が生まれ、機械化による失業は埋め合わされる見込みだ。しかし、新しく生まれる仕事は従来のものと大きく異なるため、移行は痛みを伴うものになるだろう。