「日雇い労働者の街」でカフェを営む女性の真意 「ゆるすまち、ゆるされるまち」の日常
今年は夏祭りに合わせ、ゲストハウスのココルームに2つの団体が滞在し、例年以上ににぎわいを見せていた。ひとつはイギリスの公的な文化交流機関『ブリティッシュ・カウンシル』と視察団。そして、東京を拠点に活動する路上生活者と元路上生活者で構成されたダンスチーム「ソケリッサ!」のメンバーである。
滞在中、釜芸の講座『ソケリッサと踊ろう! 三角公園夏祭りで発表!』と題してワークショップも行われた。
2012年から始まった釜芸では、年間およそ100講座が開講されている。詩や俳句、哲学、美学、天文学、合唱、書道、スケッチなどその内容は幅広く、大学教授やアーティストが講師としてやってくる。
釜ヶ崎のおっちゃんたちを中心に、旅行者や大学生、地元の子どもたちなど誰でも参加でき、交流の場にもなっている。ビールの空き缶で作る『からくり人形ゼミ』や『井戸掘り』では釜ヶ崎のおっちゃんが中心となり、参加者から「先生」と呼ばれる。
『ゆるすまち、ゆるされるまち』だ
講座はいつも、上田さんの挨拶から始まる。
「釜芸が始まって7年たちました。1期生の中には亡くなった方もいます。ここに、生きてきた人たちがいて、ひとりひとりに出会うことを大切にしていきたいと思います」
参加者全員の自己紹介では「その日、自分が呼ばれたい名前」を伝え、そこにいるみんなが声をそろえてその名を呼び、返事をする。たったそれだけのやりとりで、ひとりひとりの存在が立ち上がる。
上田さんの文章の中に釜ヶ崎を表すこんな一節がある。
「人間くささを許容する釜ヶ崎は『ゆるすまち、ゆるされるまち』だ」
釜ヶ崎のおっちゃんだけじゃない。参加したすべての人が、今ここにいる自分をそのまま受け入れてもらえる安心感を感じることができる。いつも肩書に縛られている人もそこから逃れられるのだ。
『ココルーム』に滞在していたマット・ピーコックさんに上田さんの印象を聞いた。ホームレス政策におけるアートの重要性を訴求するプロジェクト「ウィズ・ワン・ボイス」のディレクターで、国を超え10年以上の交流がある。
「初めて假奈代に会ったのは2008年。彼女はブリティッシュ・カウンシルの交換研修制度で、ソーシャルアートセクターの日本代表としてロンドンに来ていました。まず目を引いたのはその穏やかな決意です。彼女の笑顔は周りを明るくする力があり、世界を変えようとしているポジティブなパワーを感じました。
釜芸は世界中のアートとホームレスに関するプロジェクトで最も重要なものです。すべての人たちに喜びを開放し、そして知識や学びの重要性を広げるものです」