離婚そして禁酒、55歳になったブラピの現在地 最新作「アド・アストラ」に重ねた孤独感

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実際に会ったピットが期待していたよりも一層もの静かで思慮深かったのと同様に、『アド・アストラ』も静謐で深い。行方不明の宇宙飛行士の父(トミー・リー・ジョーンズ)を探してブラッド・ピット演じる登場人物が宇宙を探索する過程では、確かに、目を見開くような一連のアクション場面がある。

だが、『アド・アストラ』では、宇宙船の外の壮大な宇宙空間よりも主人公の内面に重心が置かれている。ブラッド・ピットだけが映される長いシーンには、生きることの深遠さに思いをめぐらせる彼自身の声が被せられている。

(写真:Michaiah Carter/The New York Times)

「『いったいどういうことなんだ』とか『自分たちはなぜここにいるんだ』といった疑問が時々心に浮かぶ。そういった自問自答には潜在的な危険が少しある。そこにはあまりにもワナが多いんだ」と、ピットは言う。しかし、この登場人物の孤独さには、彼に訴えかける力があった。「ほかの人たちとつながることのできない無力さ、そして、人が構築し、ついには心を本当に開くことを阻んでしまう自己防衛の仕組みをこの映画では掘り下げてみようとしている」。

心を開くことについて、今、ピットは考え続けている。心を開くという資質は誰にでも容易に備わるようなものではない。そして、彼が自身の内面のいくつかの部分を封印したくなったとしても、世界でもっとも詮索される俳優を妬む者はいないだろう。

「でも、私の演技スタイルにとっての究極の環境は、自分で理解している限りでは、絶対的な真実をつかむことでしか実現できない」と、ピットは言う。「自分にとって真実である何かを経験して初めて、それを真実としてあなたに伝えることができるようになる」。

家族については多くを語らない

2017年の初め、ピットが『アド・アストラ』の主演を決めた頃、彼はアンジェリーナ・ジョリーと少し前に離婚したことに依然動揺していた。彼女との間には6人の子どもがいる。「彼は実生活で受けた痛みを生かしたのに違いない」と、グレイは言う。「当時、そうしたことで私が彼の私生活に立ち入ることはなかった。私が関わるべき事柄だとは思わないし、仕事の一部でもない。しかし、彼がこの登場人物の本質を、自分自身を通して把握したのは確かだ」。

その頃のことをピット自身にたずねたところ、「家族のことがあった」と言ってから、こう続けた。「それはそっとしておいてもらえないか」。

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