離婚そして禁酒、55歳になったブラピの現在地 最新作「アド・アストラ」に重ねた孤独感

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冷静さと禁欲性の血筋は、映画外よりも映画内のピットにとって一層役立った。2つの重要な役柄を演じた年、彼は自身がどんな人間になったのかについて真剣に考えてみたのだ。「謙虚さを保ちつつ、能力を育み、独力で何でも成し遂げられるようになることに重点を置けて、ありがたいと思っている。でも、自分をじっくり眺めることはまだしていなかった」と、いすの上で前かがみになりながら彼は言った。

「弱くてとことん自信のない、自分の中のもう1つの部分を否定してしまっているようなものだ。私たち人間は皆そうした部分を抱えているのに。そう、そんな弱さを見つけ出し、受け入れない限り誰も本当には自分を知ることができないというのが私の考えだ」

ほとんどの部分がブラピ以外何者でもない

ピットと話をしたずっと後、何時間か経ってから、友人や家族から大量のメッセージが送られてきた。彼はどんな感じだった? どんなふうに見えた? 話している間、ほぼずっと、ピットは、悔いているような、もの静かな様子だった。まるで、懺悔する者とそれを受ける司祭の2人が彼の中で切り替わり続けているようだったのだ。

どんなふうに見えたかについては、そう、彼はグレーのキャスケットを被り、グレーのTシャツを着て、灰色の顎鬚を生やしていた。意外とも思えるタトゥーがいくつか腕にあった。ジャラール・ウッディーン・ルーミーの詩句やモーターサイクル、「Invictus(不屈)」という言葉、そして、人とその影だった。要するに、ほとんどすべての部分が、ブラッド・ピット以外の何者でもなかった。

(写真:Michaiah Carter/The New York Times)

『アド・アストラ』の脚本執筆時点でピットをすでに念頭に置いていたのかどうかをジェームズ・グレイに聞く必要は皆無だ。この映画を見ていて、ピット演じる宇宙飛行士の脈拍数が毎分80拍以上に決してならないことにほかの登場人物たちが驚嘆し始めたところでその答えは明白になった。

グレイは、ピットがいかに落ち着いているかというエピソードを喜んで話してくれる。自身が製作総責任者だった映画『ムーンライト』が2年前にアカデミー賞作品賞を受けた際、ピットがなぜ授賞式にいなかったのか不思議に思っていたならば、木の話はその理由を説明してくれる。

その夜、偶然にも、ピットはロサンゼルスに居合わせていた。だが、彼はアカデミー賞授賞式を欠席し、グレイの自宅で開かれたスパゲッティの夕食会に行ったのだった。ハリウッド最高の賛辞を受けうる立場の人物としては驚くべき優先順位のつけ方である。

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