離婚そして禁酒、55歳になったブラピの現在地

最新作「アド・アストラ」に重ねた孤独感

55歳になったブラッド・ピットが生い立ち、映画、禁酒などについて語った(写真:Michaiah Carter/The New York Times)

「早く行きたいなら1人で、遠くへ行きたいなら仲間と一緒に」。ブラッド・ピットが呟いた。彼の左肩の上にはびっくりするほど小さな赤茶色の火星が吊り下がり、彼の右側ではずっと壮大な木星がミラーボールのように照らされていた。

アメリカ・ロサンゼルスのグリフィス天文台の最下層階でピットと向かい合わせに座っていた。「宇宙の最深部」と名付けられた、隔離されたかのような展覧会には熟考する冷静な人々が居着いていた。ピットはこれまでそんな人々の役柄を映画でたっぷりと演じてきた。

「弱みを見せるな」的なことを言われ育った

今年演じた2人の登場人物もそこには含まれている。この夏のヒット作『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』で終始そぞろ歩くように物思いにふけるスタントマンのクリフ・ブース、そして、公開を控えた『アド・アストラ』で宇宙の深奥の一際孤独な前哨地に赴く宇宙飛行士のロイ・マクブライドだ。

映画スターにはそれぞれ得意分野がある。ピットは『12モンキーズ』や『スナッチ』といった映画でおしゃべりな男を演じてみせた。だが、彼が最高に魅力的に映るのは、内に何かを秘めた演技をするときだ。多弁なことで有名なクエンティン・タランティーノの監督作2本で主役を演じた俳優が、必要以上には言葉を発しない演技をしたら、それは一流の妙技としか言いようがないものに感じられる。

(写真:Michaiah Carter/The New York Times)

「何でもできるようになれ、強くなれ、弱みを見せるな的なことを言われながら育ったんだ」と、ピットは語る。トラック運送会社のオーナーの3人の子どもの長男の彼は、ミズーリ州のスプリングフィールドで育てられた。

55歳となった現在、ピットは自らのすべての演技に自身の父の影を見るに至った。「ある意味、父を手本にしているようなもんなんだ」、彼は言う。「父はひどい逆境と貧困の中で成長した。そして、自分の生まれ育った境遇よりも私の境遇をずっとよいものにしようと心に決めていた。実際にそのどおりにしてくれた。まさに、父は冷静そのものといったタイプだった」。

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