爽健美茶VS.潤る茶~熾烈なマーケティング戦争 /タブーに挑戦したZ会CM「わたしたちをこえていけ」 /「マックスコーヒー」33年目の全国侵攻・その勝機 《それゆけ!カナモリさん》

 

■2月18日 タブーに挑戦したZ会CM「わたしたちをこえていけ」

 通信教育・ Z会のCM。これが色々な意味でオモロイ。なにやら、やたらオッサンやオバサンが出てきては、「もうやめちゃおうかな」とあきらめかける受験生に、「私も続かなかった」「頑張ればよかった」とぶつぶつとつぶやきかけるだけ。ところがなぜかぐっとくる。

CMは女子高生編・男子高生編があり、「できひん子」やったオッサンやオバサンが、現役の高校生に口々に自らの挫折を告白し、「チャレンジする!」と宣言する女子・男子に拍手とエールを送るという内容である。

「(通信教育が)続かなかった」と、大勢のオッサン、オバサンが口にする様は、オッサンらと同年代である筆者も同じ挫折を経験しているところであるため、妙にトラウマをサワサワさわられているようで、気持ち悪くも忸怩たる思いでいっぱいになる。

なんとなくオモロイと思った次には、よく考えれば「コイツはすごいCMだ!」と思った。その理由はいくつかある。

まず、メインメッセージが「わたしたちをこえてゆけ」となっている点。「続けていれば今頃は……」などと登場人物のオッサンらが口々に言う。つまり、「こえていく」対象は、「通信教育が続かなかったわたしたち」の「死屍累々」だ。

確かに同会は毎年東大合格者を何人も出す名門通信教育だ。「死屍累々もやむなし」かもしれない。しかし、自社の受講生の挫折率の高さとも解釈されかねないメッセージを、ここまでしっかり出せるということに、逆に大いなる自信を感じる。

もう一つ。

「私は続けられなかったけど」というメッセージ。下手をすればイヤミな感じになりかねない。わざとらしさが出たらアウトではないだろうか。しかし、このエキストラ的に大量に登場するオッサンらが実に自然で、ある意味、シロウト的で自然でイヤミがないのだ。聞けば、Z会の社員であるという。

社員を起用すると、自社のサービスの質の高さをアピールしようとばかりに、不自然な演技になりがちだ。しかし、実に自然なのだ。いや、むしろ楽しそうだ。

「挫折する人もいるけれど、続けられれば必ず結果が出る!」と、自社のサービスに強い自信を持ち、それを支える自分たちに強い誇りを持っていることが画面から伺える。

そう考えると、このCMのキモは、大勢のオッサンやオバサンを演じる社員の演技が、ちょっとシロウトっぽいけれど、リアルで説得力を持っていることであることがわかる。

シロウトっぽく社員を登場させるといえば、静止画で社員一同が映っているだけの中古車販売店や不動産会社などのCMがおなじみだろう。しかし、それらは単に「映っているだけ」でなんの意味もない。

一方、Z会のCMで今回社員達が果たした役割は大きい。

通信教育会社の社員が、真偽はともかく、「私は続けられなかった」と告白するのは、顧客である受験生にとって、一気に親近感がわくのではないだろうか。「ああ、人の痛みがわかる人たちの会社なのだな」と。

社員自ら過去(真偽はともかくとして)を告白して、「相手の痛みに触れる宣言」をしたことも大きい。「受験生サポート」は、受験産業の基本ではあるけれど、今まで以上に思い入れを持って顧客に接するだろう。社員のモチベーション向上効果もバッチリだ。

しかし、こんなにも大胆なCMをよく作れたなと思ったが、これはウェブの動画広告としての使い方をメインにして作ったものなようだ。(もしかすると、テレビで流れたりすることがあるかもしれないけれど)。

従来の常識、方法論を乗り越えて、売り手と買い手(この場合は受験産業の担い手と受験生)の距離感を一気に縮めてしまった感触が画面から伝わってくる。従来のマスメディア、マス広告からは考えられない凄味が、この動画から感じられる。

自社や自業界のタブーともいえるメッセージを発し、より顧客との距離感を縮める演出をほどこし、ネット動画というメディアを使いこなす。

CMの世界が大きく変わったということの証左を見せられた気がした。

 

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