■3月2日 「世界のKitchenから」のマーケティング整合性に学ぶ
JR東京駅構内のコンビニ「NEWDAYS」。先日ふらりと立ち寄ってみると、飲料棚で一気に7フェイスを確保している飲料があった。キリンビバレッジの「世界のKitchenから とろとろ桃のフルーニュ」。昨今のゼロカロリー、お茶ブームの中で、ひときわ異彩を放っている。いったいどんな戦略が裏側にあるのだろうか。
「とろとろ桃のフルーニュ」は2009年2月17日に、昨年3月以来の商品リニューアルをした。「煮こんだ桃とマンゴーを増量し、ますますとろとろおいしく贅沢になりました」とうたい、新発売時以上に力を入れた展開をしている。
「世界のKitchen」の共通コンセプトである「世界の母さんがつくる料理からインスピレーションをうけたレシピ」という独特の仕上がり。「桃のフルーニュ」は乳原料を用いているので、乳酸飲料に似ていて、フルーツカルピスやヤクルトの一種にありそうな味ではあるものの、そのどれとも違う。
商品の独自性は根強いファンを生んでおり、そのクチコミを促進すべく専用のWeb「セカキチ ファンクラブ」まで作られている。「世界のKitchen」の世界観が音と映像で丁寧に表現され、ファンのクチコミやレシピの元になった国の市民の感想が読める。
桃のフルーニュではハンガリーの街角で拾った感想が紹介されているが、みなが口々に言うメッセージは一つ。「うまい」。
飲料は常に新しい商品が上市されているが、「とにかく美味しい」というイメージを持つ商品が思い浮かぶだろうか。例えて言うならアイスクリームのハーゲンダッツのような。恐らくないだろう。
昨今の飲料市場における動きは、「緑茶カテゴリーの成熟~衰退」と「炭酸飲料の伸長」が特徴だ。「緑茶戦争」ともいわれ、多数のバリエーションや高級ラインの展開など、様々な工夫がなされたが、消費者の嗜好は「ゼロカロリー」の登場によって炭酸飲料に流れた。
当たり前のようだが、市場にはもともとノンカロリーであるお茶や、甘みがあるがゼロカロリーの炭酸飲料を求めるセグメントだけが存在するわけではない。カロリーよりも、飲料としての「味わい」を優先する層も確実に存在する。
しかし、紅茶や果実、乳飲料などのカテゴリーはメインストリームではないため、目新しい商品はあまり開発されてこなかったと言える。
そこをキリンビバレッジはついた。
「カロリー優先ではなく、美味しい飲み物が飲みたい」という層の「ニーズギャップ」を「世界のKitchen」シリーズは独自のポジショニングと世界観ですくい取ったのだ。
世間の大きな流れに惑わされず、顧客のニーズをしっかりと見極める。マーケティングの基本に立ち返り、これほどまでに明確にポジショニングした飲料系商品、見当たらない。
しかも、売り方もうまいのだ。ポジショニングをうまく生かした施策がとられている。
現状のシェアは不明ながら、コンビニの棚を2フェイスしっかりおさえていたことから、しっかり売れ、「スター」に育ったと推測できる。
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