どうなる?カップヌードルの肉変更/あっぱれ!森永製菓の顧客志向と社会志向のマーケティング/時代は細マッチョ?サントリーの戦略を読み解く《それゆけ!カナモリさん》
■3月27日 どうなる?カップヌードルの肉変更
「品質改悪ではないか?」との声がネットでわき起こっている。日清食品「カップヌードル」。具材を強化し、肉を「ジューシーな角切りチャーシュー」に変更するという同社からの発表を受け、根強いファンたちの間で、反発が広がっているようだ。なぜ、そのようなことが起こっているのだろうか。
同社のニュースリリースでは、このたびの具材強化により、お客様に「カップヌードル」のおいしさを実感していただき、カップヌードルブランドおよびカップめん市場全体の活性化を図りますと、その意図を伝えている。発売以来、具材の増量や、容器の「ECOカップ」化など、時代に応じた「進化」を続けてきたとしている。
今回の「進化」に期待する声もある。一方で、あのフニャっとしながら、どこか芯が残るような独特の食感をもった肉(ダイスミンチという名前だったようだ)が姿を消すのはなんとも寂しいというファンたちの声も大きい。一体どちらに転ぶのだろうか。
定番商品に対し企業が仕様変更という決断をした結果、消費者がそっぽを向く現象では有名な事例がある。コカ・コーラだ。
■消費者は知覚品質を買っている
コカ・コーラ「カンザス計画」とも呼ばれるこの製品仕様変更の顛末はウィキペディアの記述に詳しい。
1975年、米国ペプシコ社の天才マーケター、ジョン・スカリー(後のアップルコンピュータCEO)は、徹底した飲み比べキャンペーンである「ペプシチャレンジ」を仕掛け、「ペプシの味の良さ」をアピールして大きく売上げを伸ばすことに成功した。
追われる不安から、コカ・コーラは製品の味を根本的に変えるという戦略に打って出た。新しい味は、コカ・コーラ発売100年の直前である1985年4月24日に「ニュー・コーク」として市場に投入された。しかし、ニュー・コークは消費者の不評を買い、コカ・コーラには抗議の手紙や電話が殺到する事態に。7月10日に至って、元のコカ・コーラをコカ・コーラ・クラシックとして再び販売せざるを得なくなっていった、という。
「知覚品質(Perceived Quality)」という言葉がある。
知覚品質とは、消費者が商品・サービスを購入するにあたって感じる品質のことであり、商品の機能や性能などの物理的属性に加え、信頼性や雰囲気などの主観的な要素も加味して判断されるものだ。それゆえに、企業が何らかの機能や性能を高めたり、原材料を変更したりと物理的な品質(工場品質とも呼ばれる)を高めても、消費者にとって意味のあることでなければ、知覚品質が高まったとことにはならないのだ。
今回もネットで反発しているのはヘビーユーザーが多いようだ。彼らはまさに、「味の良さ」で食べているわけではなく、まさに、「カップヌードルのイメージ」という「知覚品質を買っている」という状態が伺える。
だとすると、製品改定がもたらす新たなポジショニングは、ヘビーユーザーの知覚品質に合わず、離反を招くことが懸念される。
仕様改定されたカップヌードルの発売は4月20日。発売前からこれだけの話題を集めるとは、同製品の人気の高さが伺い知れるし、事前広告効果もバッチリだ。しかし、その後の消費者の反応は未知数である。一口食べて「確かにうまい!」と腹落ちさせることができるのか、それとも、知覚品質を納得させることができずに、ニュー・コークのような顛末を辿るのだろうか。
まずは、改訂後の商品を食べてみようではないか。
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