1990年代末からは企業部門は資金余剰となって債務を減少させてきた。現在では日本企業の三つの過剰問題は、ほぼ解消されたと考えられている。
企業が債務を減らし、家計が金融資産を増やすということが同時に実現するためには、誰かが債務を大幅に増やしていなくては不可能だ。この間に、ネットで債務を大幅に増やしたのは、政府と海外で、その額は、政府が510兆円、海外が228兆円である。
家計と企業合わせて600兆円以上の純金融資産の増加(負債の減少)は、政府が負債を大幅に増やしたから可能になったという面が大きい。家計はお金持ちになり、企業は財務体質が改善したが、それは政府だけが借金を膨らませた結果である。民間部門はバランスシートが大幅に改善したが、それは政府のバランスシートを大幅に悪化させることで実現している。日本経済の財務体質が改善したかのように見えるのは、実は錯覚に過ぎないということになる。
対外純資産を増やせば良さそうだが、日本が対外純資産を増やせば同額の純債務をどこかの国が増やさなくてはならないという問題がある。これについては、また別の機会に詳しく述べたい。
GDPを生み出す資産だけを国富に計上
実は、実物資産の中で国富に計上されるのは生産に使われるものだけで、普通は財産だと考えられている自家用車やテレビ、パソコン、家具などの耐久消費財は入っていない。国民経済計算では家計の保有している主要な耐久消費財の残高を、2012年末で130兆円余りと推計しており、3000兆円という国富に比べると額は大きなものではない。計上されない理由を明確に説明したものは見当たらないが、GDPを生み出す資産だけを国富と考えているようだ。
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