日本の国富が減少したわけ

GDPを生み出さない資産は国富に計上されない

何が自分の資産かということに疑いを持つ人は少ないだろうが、日本という国全体の資産となると、常識とは少し異なるところもある。国民経済計算の用語解説には、「国富とは国全体の実物資産及び金融資産の総額から、負債の総額を差し引いたものであり、実物資産と対外純資産の合計に等しい」、という趣旨の説明が書いてあるが、中身を良く見ると「国富」が、普通思い浮かべる「資産」とはかなり違うことが分かる。

例えば個人の資産で大きな位置を占める預貯金などの金融資産は、国富の中ではごくわずかの割合を占めるに過ぎない。家計の金融資産残高は約1500兆円と言われるが、国富の中で金融資産は2012年末で約300兆円に過ぎない。

個人の保有している金融資産は誰かの負債であり、それも国内の企業や政府が借りているものが多い。国債は国の負債であり、社債は日本企業の借金だ。銀行預金は国内の銀行の負債で、銀行はさらにそれを企業に貸し出すなどしているが、その多くは日本企業の負債である。国内のお金の貸し借りでは、金融資産と同額の負債が発生するので日本全体としては資産にならない。

日本が海外に対して保有している金融資産と、日本が海外に対して負っている負債の差である対外純資産だけが、日本の資産として国富に計上されている。

政府だけが債務を増やし続けた

日本の家計は長年貯蓄に励んできたため、2012年度末には保有している金融資産は1588兆円に達し、364兆円の負債を差し引いた純金融資産は1225兆円に達する。当然負債が金融資産を大きく上回る部門があり、非金融法人企業は純債務が約400兆円、一般政府も純債務が約600兆円に達している。

1994年度末から2012年度末までの間に家計は443兆円純金融資産を増やした。この間に非金融法人企業も200兆円純債務を減らしている。

バブル景気の中で企業は借り入れをおこなって積極的に設備投資をした結果、バブル崩壊後は、過剰債務・過剰設備・過剰雇用という三つの過剰に苦しむことになった。

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