「現役の終わり」がない人のたった一つの視点 京都で出会ったご婦人の中に見た希望の光

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京都で出会ったご婦人の中に見た「希望の光」とは…(イラスト:Masami Ushikubo)

数日後には、台風がやってくるらしい。

そのせいか、暑いといわれる夏の京都の中でも、ことさら暑い日だった。

歴史ある花街。風情ある長屋の立ち並ぶ上七軒通りを、日傘を差して歩く。頭上の紫外線を99%遮っても、石畳の照り返しで足元からじわじわと焦げる。それでも辛抱して歩くのは、念願の舞妓さんに会うためである。

お盆のこの時期、油断すれば、あの世から帰ってきたご先祖様とバトンタッチで私があの世に行きかねない殺人的な暑さ。わざわざこの時期の京都を歩いているのには2つ理由があった。1つは念願の花街ビアガーデンを訪れるためだ。

一般人が、舞妓さんと会える意外な場

私は約1年前から京都の舞妓さん文化にすっかり魅了されてしまい、それでいて、1度も本物の舞妓さんを見たことがなかった。でも、それもやむをえないことだと思っていた。なぜなら舞妓さんに会えるのは、お茶屋さんへの入店を許された選ばれし者だけだと考えていたからだ。

『家族無計画』などで人気を博するエッセイストの紫原明子さん。この連載でつづるのは、紫原さんが実際に見てきたさまざまな家族の風景と、その記憶の中にある食べ物について。連載の一覧はこちら

社会的、経済的な成功を手にし、リッチな社交界の一員にでもならなければ、とてもじゃないが芸舞妓さんと直にお目にかかることはできるはずがないと思っていた。

ところが、夏の京都では私のような一般人が、いとも簡単に芸舞妓さんと会ってお話することができる場があると知る。それが、各花街が開催するビアガーデンである。なんとそこでは毎日、当番の複数の芸舞妓さんが、お客さんに挨拶に来てくれるというのだ。

料金システムは花街によってさまざまだが、上七軒の場合は最初に2000円のビールとおつまみセットを全員が自動的に頼み、あとはそこに追加オーダーした分だけが加算される明朗会計。こんなに安心して舞妓さんと会える機会はめったにない。

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