サントリーが「ラグランジュ」を再生できた理由 「神の雫」亜樹直×椎名敬一「極上ワイン鼎談」

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 言葉は大丈夫でしたか。

椎名 フランス語はゼロから学びました。もう44歳でしたから大変でしたよ。正直、小学生、中学生レベルのフランス語しか話せませんでしたが、ブロークンでも言いたいことは何とか伝えられるものです。片言でも熱心に伝えようとすれば、相手は聞いてくれますし、理解しようとしてくれます。

ゆう子 以前、ラグランジュにお邪魔した時、設備を拝見しました。やはりこういった設備もクオリティを高めていくうえでは重要な要素になるのですね。

椎名 まず1985年に設備を一新して、2008年にタンクを小型化し、それと合わせて2009年には画像解析でブドウの粒を選別する選果機を入れました。これはブドウの形と色で、良いものを選別するというものです。そのレベルがとても良いので、当初はファーストラベルのみに導入していたのを、2012年からはセカンドラベルにも広げました。

ボルドーワイン全体のレベルが一段と上がっている

 画像解析の選果機を導入したことで、品質が一段と上がったわけですね。

椎名 確かに、悪いものを除けば良いものが出来上がります。しかし、画像解析の選果機とタンクの小型化を行ったことの本質は、その武器をもって、畑でブドウを完熟させられるようになったことです。昔は人海戦術で粒を選っていたので、物凄く時間がかかりました。そのため、天候によっては完熟する前に収穫せざるを得ませんでしたが、今はこの武器があるおかげで、悪天候になっても完熟するギリギリまで待つという判断が出来るようになったのです。

ボルドーのメドック地区のなだらかな丘陵にあるシャトーラグランジュ。気品のある佇まいは昔から全く変わっていない (写真:シャトーラグランジュ提供)

 画像解析の選果機と小型タンクの導入によって、ブドウを選別する技術や人海戦術で出来る部分が機械化され、原材料となるブドウの品質をギリギリまで引き上げられるとなると、最後、ワインの差はテロワールの違いだけになるということですか。

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