はあちゅう語る「夢を偽る副業ファーストの人」 普通の人生でも「サードドア」で幸せになれる
面白かったのは、ウォーレン・バフェットにアタックする過程に登場する、「やらないことリスト」の話です。ここには大きな教訓があると感じました。
現代は、さしたる目的もなく、ただ何かに挑戦すれば人生が充実するだろうという感覚の人が多くて、「やりたいこと」のリストは多いんですよね。「死ぬまでにやりたい100のリスト」のようなバケットリストが流行しましたが、その結果、飛びたくもないバンジージャンプを飛んだり、何の原体験もないのにオーロラを見たくなったりする人がたくさん生まれてしまった気がします。
今は夢を持つことが難しい時代です。だから、自分には夢があるかのように見せたり、そう思い込みたくなるのだとも思います。子どもは、「働かずに寝て暮らしたい」と言うより、「宇宙飛行士になりたい」と大きな夢を言えるほうが褒められますよね。大人の世界も同じです。宇宙を目指す堀江貴文さんのような著名人とSNSでつながって、自分もそんな大きな夢を持ちたいとコンプレックスを持ってしまうわけです。
稼ぐという面においても、最近は、副業を最初から広げていく人が多いことが気になっています。副業というのは、まず本業で名を成した結果として、できることの選択肢が増えて広がっていくものだと思いますが、最初から「副業ファースト」になっている人が多いんです。本業も副業も同時に広げてしまうと中途半端になりますし、欲張りすぎると、1つのことに全力を注げないんじゃないかと思っています。
そういう意味で、バフェットの「やらないことリスト」は、一流の人はやらないことを明確にすることによって、結果的に自分のやりたいことをしっかりやり遂げることになるんだという含みがあり、ズシンときました。まあ、このリストにはどんでん返しが起きるのですが……。それでも、現代の風潮について考えさせられる場面でした。
弱いリーダーへの共感
アレックスの失敗の連続を読みながら、「弱いリーダー」の姿が思い浮かびました。今は、成長時代の強いリーダーよりも、1人ですべてを抱え込んだりせずに、失敗したことも含めてみんなにその体験をシェアできる人がリーダーになる時代です。
たとえ、たびたび炎上するとしても「守ってあげなきゃ」とか「面白い」と思わせるものがあると、多様性の中でそのいびつさが受け入れられてゆき、上下関係ではなく、並列の関係として共感を持たれます。そして、そこにコミュニティーが生まれると、その人はコミュニティーの代表となっていく。
自分のことを語るときに、カッコいいところだけでなく、カッコ悪いところや弱みも含めてすべてをさらけ出した人のほうが親近感を持たれやすく、長い支持を得ることができるわけです。『サードドア』が読まれるのもそういう理由があるからかもしれません。
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